Catants

□十一
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禁じられた森の入り口近く。

その辺りを3人は歩いていた。

ハグリッドの歩みが早いものだから、アーサーは早々に息を切らしていた。

一方ラキは楽々とついていき、足取りも軽い。

まだ入り口付近とはいえ、大木が立ち並び、凹凸の激しい土地だ。


「どうしたアーサー、まだ序の口だぞ。」

「ふたり、が、早、すぎる、んだ!」


ラキは無言で振り替えって、アーサーを無表情で見つめていた。

ふと、その視線が上へと向けられる。


「どうしたラキ?」

「………」


ラキはひたすら無言で、上を指差した。

指を差して、目をこらす。

ハグリッドも同じように見つめるが、無駄だった。


「なにがあるんだ?」

「…鳥。」

「怪我しちょるのか?」


ラキは首を横にふった。


『綺麗だ…』

「え?」


呟かれた声は日本語で。

アーサーは思わず聞き返す。

ラキは空に手をのばした。

ラキにしか見えないものを掴むみたいに。

伸ばした手を握りしめ、大切そうに胸の中で開いた。

しかし手のひらには何も残らず、ラキの表情には暗い影がうつる。

アーサーはガッサガッサと歩き、ラキの近くまでいった。

不思議そうにアーサーを見上げるラキ。

アーサーはラキに手を差し出した。


「行こう。」


ラキは首を傾げて。

わからないかと思い、アーサーはラキの手を握った。

思いの外、取った手は冷たくて。

すると一瞬ゆれるラキの瞳。

固くなる身体。

アーサーは構わずラキの手をひいた。


「ハグリッド、どこまで歩くんだい?」

「なに、もう少しだ。」


つないだ手は、少しずつ体温を移す。




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