☆頂き物Garden☆

□「あなたのコト考えてたら、玉子焼き焦がしちゃいました。」
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昼下がりの瀞霊廷の繁華街、とある喫茶店にて。

七緒ややちると甘味を食べに来ていた乱菊の耳に入りこんできたのは、隣のテーブルで為されている会話。数人の女性隊士が何かを見ながら、きゃあきゃあとはしゃぎ喚いていた。



「かっこいいよねぇ〜!」

「それにかわいい!」



テーブルの中央に広げられているのは、日番谷の写真集。彼女たちは日番谷のファンであるということがすぐに分かった。



「(ここにも、か。さっすが隊長、大人気じゃない)」



瀞霊廷に数多くいる日番谷のファンを見かけることなど決して珍しくない。
むしろ慣れっこだと、いつものように気にも留めず出された和菓子にありつこうとした乱菊だったが。



「…私、日番谷隊長にお手紙書こっかなぁ…」



出し抜けに、一人の女性隊士がぽつんと呟いた。匙を持った乱菊の手が空中で止まる。



「日番谷隊長は私のこと知らなくても、私の気持ち、知ってほしいし…」



場に一瞬、静かで当惑したような空気が流れる。ところがそれはすぐに、別の女性隊士の声によって打ち消された。



「…じゃあ、私も」

「私も」

「私も!」

「あっ、私 何かプレゼントしよっかな!」

「えっじゃあ私はお弁当作って渡すー!」



次々に日番谷へのアプローチ手段を宣言していく女性隊士たち。気持ちを伝えるという当初の目的はすっかり消え、誰が日番谷の心を射止めるかという奪い合いになってしまっていた。普段は仲の良い友人同士なのだろうが、彼女たちの目には本気の色が見てとれる。



「負けないんだから」

「こっちこそ!」



白熱していく彼女たちのやりとり。乱菊は手を止めたまま、それを黙って聞いていた。









腕を組み 眉間に深く皺を寄せて、考えること数秒。



しかし答えは見つからずに、日番谷は首を横にかしげた。

彼の頭を悩ませているのは、今 目の前に積まれている書類や、昨日の任務においてではなく、ここ数日自分に押し付けられる好意に関することだった。



「(何なんだ、この手紙といい弁当といい…)」



日番谷は再び思考を巡らせる。

女性隊士から手紙や手作り弁当をもらうことに対する疑問ではない。彼を慕う女性たちからいつも渡されるものと同じような手紙や弁当の中に、一つだけ、不可解なものがあったのだ。
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