Traum
□〜Pretend to be innocent.〜
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「…お前によく似た人を知ってるよ。」
紫煙を吐きながら、彼は静かにそう呟いた。
Х Х Х Х
それは“異様”な光景だった。
《純白》のワンピース姿で、墓前に佇む少女…。
「…死人の花嫁にでもなるつもりか?」
赤き薔薇を携えた青年は その光景に眉をしかめながら静かに言った。
「いいえ?」
唐突に話しかけられたにも関わらず、少女は振り返らずにしれっと答えた。
「そんな資格…ないですからね。」
…微笑った…気がした。
Х Х Х Х
目の前に佇む少女は…
確か、現在“研修”の名目で潜入している学校の―― しかも、受け持ったクラスの娘だ。
名は…“不破 翔”
これといって 目立つタイプでは無い。
俺に近寄って来る女子生徒とは正反対に、自分の席で机に向かっているか、友人と喋っているところしか見たこと無い。
「― 先生も、誰かのお墓参りですか?」
ようやく振り返った少女はどこか儚く…
「あぁ…一応な。」
その儚さを誰かに重ねながら、曖昧に答えた。
(…似ている…。)
その儚さも、異質さも、なにもかも…。
「で、何でそんな格好なんだ?」
「約束した…からかな。」
俺の問いかけに、彼女は再度墓に向き直った。
墓石を見つめているその表情は笑っているのに、どこか泣いている様にも見えて…
純白に彩られた少女は…アノ存在に酷く似ていて、でも対象的で…。
「…お前によく似た人を知ってる。」
紫煙を吐き出し、青年は静かに言った。
「…そうですか。」
深くは言わずとも、少女にはその言葉の意味がわかっていた…
だから。
――少女は無垢の振りをする――
(馬鹿馬鹿しいな、この子には何の関係も無いのに)
(知らないほうが幸せでしょ?)
ХХХХХХ
意味プーな作品。
本編では今のところ、関わるはずのない組み合わせです。
いや、一番初めに書いたヤツでは、バリバリ関わったんだけどね。
“表”と“裏”にわけたら必然的に。
だから、今回は最初のヤツのシーンでってことで。
別にラブもなく 不思議な仕上がりになりました。
2007.12.23