main
□そと
1ページ/4ページ
身体、心が人間に戻れる時が日に日に短くなってきた。
否、狐になる時間が長くなっているのだ。俺、うずまきナルトは人間だ。だから人間でなくてはいけなかった。
今、こうやって堂々巡りをして考えてるこの俺がうずまきナルトだ。そしてこの堂々巡りこそが、俺が唯一人間だと確認出来る術。
なぜかって?
動物は考える事ができない。本能で動く。
俺が九尾の時には目の前に通り掛かった、猫、犬、ウサギその他小動物を噛み殺し口を血だらけにして食っているからだ。
そして喜ぶ。
さっきウサギを食ってきた。今、人間にもどった。お陰で、口が血だらけだ。早く口を濯がないと。九尾で狐の獣の姿をしているときは何も思わない。が、今は人間の姿。あの、細長くみっともない耳も無ければ、九尾を象る九本の尻尾もない。
だからこそ困る。口が血だらけの人間。そんな奴は到底いないだろう。が、もし居たら?
それが自分だったら?浮くにきまっている。もとから、金髪に碧い目だから尚、浮く。
また、道端ですれ違う人間の話声が騒つく。どーせ俺の事だ。
(ちょと、何あの血。)
(知らないの?あの子。気味が悪いわ。何されるかわからないわ。早く隠れましょう。)
女どもがお得意の陰口であいつらはコソコソと道の隅に隠れて行った。
まぁ、居なくなるなら俺も嬉しいってば。
こんな、噂話はもう慣れた。最近はもう、[あの子]で有名だ。[あの子]と言うのが自分だと知った時にはもう遅かった。街で、きちんとした格好でもガキどもが小石を投げてくる。
もう小石を投げられたら痛いということを忘れていた。そんな時だった。小動物をなかなか見つけれなかったので、空腹で我慢しきれず、狐の姿で人間を食べようと考えた自分がいた。
恐ろしかった。
この考えが。だって、自分は人間だ。人間が人間を食べる筈がない。共食いだ。
もう、自分は人間を信じない。人間を愛さない。
狐になって生きた方がいい。何も考えない。何も苦しまない。
もう、夕暮れ。コオロギが鳴いているのがわかる。
人が居ない。
古びた神社に着いた。口を濯ぐ為になぜこんな辺境な地に来たのか。それは、神様とやらに人間の姿のままでいられますように、と祈るわけでもない。誰も居ない井戸で口を濯ぐ為だ。
水がある所に人間が集まるっていう話は本当だった。それはこの姿になって痛いほど知った。だからここ。このだれも来ない神社で口を濯ぐ。
神様に祈る為ではないということを再確認した、俺は目的を果たしたので帰ろうとした。
その時だった。
人間に会ったのは。
否、小石を投げてくるガキや噂話大好きのあいつらや俺の様に汚い人間ではなく、本当の人間に会った。
黒髪。少年。黒曜石の様な目。乳白色の肌。しなやかな髪はセンター分けされ、おでこが広い。女の子みたいだった。神社から迷いでた猫の様でもあった。が、態度は威風堂々。神々しかった。
「おい。お前」
止まっていた時間が喋りかけられて、一気に進んだ。声の主は目の前にいる少年。声を聞いて男だと理解した。
「え?俺?」
「そうお前だ。」
こんな容姿な少年と縁があるとは到底思えなかったので、一応確認した。
「お前、井戸の水勝手に使うな。水道料金払え。もちろんこの俺にな。」
縁があったのは取り立てでした。