short(旧)
□ブラックコーヒー
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きっかけは通り雨だった。
例のように俺は、木の葉の里と砂の里を結ぶパイプ役であるテマリを接待していたのだが、それらの仕事が終わった頃、降られた。梅雨入りの、あのじめじめとした感じが朝から鬱陶しかったため、いつか降るなとは思っていたが、まさかテマリを宿まで送る途中で来られるとはなんとも憎たらしい。俺は軽く舌打ちをする。テマリはテマリで、天気の移り変りの早さについていけないらしく、珍しく当惑した表情を浮かべていた。無理もない。生まれも育ちも砂漠のど真ん中であるこいつは、未だに木の葉の里の四季に慣れていないのだ。
無意識にも助けを求めるような視線を俺に送ってきたので、
― 走るぞ。
と、テマリの濡れた手をとった。