short (旧A)
□愛しきジョーカー
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家に帰ると、不承無承な顔をしたカンクロウが夕飯を作っている最中であった。普段は忙しさにかまけて手軽なものしか作らない彼が、今日はその器用な手つきを駆使しているらしい、料理の苦手な俺から見ても、それは豪勢な品々である。何か祝い事でもあるのだろうか。しかし対する彼の表情は、どう見ても祭典とかけ離れたもの。こうなるとこの兄という男、関われば面倒この上ない事態を招くので、俺はいそいそと居間へ逃げ込んだ。
と、そこにはテマリの姿。深々とソファーに腰掛け、
「おかえり、我愛羅。」
と、こちらは大層上機嫌な声。赤くけだるい服を着込み、優雅に足組むその様は、さながら砂の女王であった。
女王は、もてあそぶようにトランプをきっていた。喧嘩でもしたか、と思えどそうでもない。俺の視線に気づいた彼女は、手を止めニヤリと笑った。
「ポーカーをしたんだ。カンクロウと。」
俺は納得した。ふむ、それで夕飯の支度でも賭けたのだろう。二人はよく、そういう遊びをする。