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□寂しがりやな貴方に
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「なっ何に、怒ってるっんです、か…?」

泣いていて上手く喋れない。
自分に対してではないのに、今度は安心して涙がほろり。
私の喋り方に違和感をもったのか、天地さんがようやく振り向いた。

「……何でお前が泣くんだ」
「うっ…気にっしないでっ下、さい…」

俯き、手の甲で涙を拭う。
いつも泣いてばかりでご免なさい。
メンタル弱くてすいません。
はぁ……溜め息が聞こえた…すいません。

「泣くな。お前にじゃねぇ」
「ずっずみばぜん…」

鼻水は垂れてはいないけど、鼻が詰まって少し苦しい。
メソメソしている私を見て、天地さんは視線を外した。

「あいつが…」
「…あいつ?(黒岩さん?)」
「お前に触ったからだ」
「………え」

黒岩さんが、私に、触った…天地さんが、怒った…
ハッキリと間違いなく繰り返す。
そそっそれはつまり、世間で言うしっしし、しっ……しっと…?嫉妬!?天地さんが!?
なっ何だろう、なんか、なんか…

「てっ照れますねっ!」
「……」

純粋に…そう、純粋に思った。
他に言葉が見つからず、それだけが浮かんだ。
エヘ!とでも云うような、少し抜けた顔をした私を見る天地さんの目は、瞬時にギラついた。
グニィィ…両手で左右の頬を軽く抓られる。

「てめぇ、人が真剣に話してんのに何だ?その返事は」
「ごっご免なしゃい!」

ヒリヒリ…全然軽くなかった。
だって、本当に照れるじゃないですか…
あの天地さんが嫉妬とか凄く嬉しいんです。
何か愛されてる、そうやって自惚れてしまうのだ。

「でも蹴るのは駄目ですよ…黒岩さんに申し訳な」
「俺の前で他の男の名前を言うな」
「……」

我が儘、だ。
何故だか私が悪い立場になってないですか?
天地さん、俺は間違ってはいないと云う表情をしている。
こんな感じなのは今に始まった事ではないけど、毎度悩まされてしまう。
だけど、天地さんは優しい。
その度に私はドキドキしている。

「私の、こっ恋人(小声)は、天地さん…だけ、ですから…」

……うわぁ!何恥ずかしい事を言っているんだ私は!
と云うかその通りだから!何か私が二股したみたいになってる!?
まるで痛い子みたい!?
顔を上げると案の定、天地さんは目を丸くしている。
私だってこう云う事言うんですからねっ!

「名無子」
「っ!」

ドキッ…胸が高鳴る。
普段、天地さんは私を名前で呼ばないので驚いた。
うぅっ、だんだんと顔が熱くなってきたような。

「…当然、だろ」

腕を引っ張られ、再び歩き出す。
歩調は私に合わせてくれて、私の腕を掴んでいた手は下がっていき、手と手を繋ぐ形となった。
ここっこんな事滅多にない!
今、この貴重な一時を壊してはいけない!!
繋いでいない方の手で自分の頬に触れてみた。

「(あっつい…)」

私より20cm以上も高い天地さんを、少しだけ顔の角度を上げて見る。
天地さんの耳も…真っ赤だ。
少しだけ、少しだけ、天地さんに寄り添った。
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