C+W

□いつもと違う仲直り
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「お大事にー」
「ありがとうございましたぁ」

あれから左頬は腫れていき、これはまずいと病院へ行った。
対処が早かったこともありだいぶ腫れも引いたが、それでも少し湿布からは痛々しく腫れの赤みが出ていた。

「一日中痛かったからなー学校ない日でよかった…いや良いことじゃないけども」
「名無子?」
「ん?」

見やると其処には難波さん。
とにかく大きな人で人目で彼だとわかった。
この近くに住んでいるのか、服装はちょっとコンビニにでも行くのかという楽な服装だった。
案の定手にはビニールがぶら下がっている。
いつもマスクで表情もあまりない人だが、今の彼は驚いている顔だとわかる。
その顔が新鮮で、思わず見入ってしまう。

「わぁ難波さん!こんにちは」
「おぉ、名無子…その頬どうした」
「腫れが酷いので病院に」
「虫歯か?」
「違いますよ!」

こんな腫れるまで放置しません!
難波さんの隣に近づき一緒に歩く。

「これ結構目立ちますか?私も難波さんみたいなマスクしようかな」
「やめとけ…それで、どうしたんだ」
「…秘密ですぅっ」

なんとなく可愛く言ってみた。しかしとたんに彼は歩みをやめ、じろりと
こちらを睨む。
めっちゃ怖い。
彼の敵になった者の気持ちがよくわかった。

「誰にやられた」
「女の子の秘み痛たたたたたた痛い!痛いです!」

まるでサッカーボールを掴むように私の頭を鷲掴み、力を込める。
彼ならきっとりんごを片手で潰せそうだ。
言います!とすぐに根をあげたら離してくれた。
男の子の世界での友情はとても強いもので、身内がやられた後の報復がすごい。
更に武装戦線なんてそりゃあもう仲間の絆が強い。
私は武装戦線には属してないけれど副頭の彼女という繋がりがあるので、私のせいで皆を巻き込むのは嫌だった。
だけどこのままでは私の頭が壊れてしまうので結局は自分の安全なのだ。

「あの、内緒にしてくださいね?」

ポツポツと語り出した。

あったことを話終えると難波さんは「そうか」と言いながら携帯電話を取り出した。
…何してるんです?

「将太、名無子がな」
「内緒って言ったじゃないですかああああ!」

うわあああと将太君との電話を阻止するため携帯を持っている腕にぶら下がる。

「そいつは口元にホクロがあって…」

びくともしない…!
何かぶら下がっているのか?という程に耳から携帯が離れない難波
さんの恐るべき腕の筋肉!
パタンと携帯を折りたたみ締まった難波さんは私の手を引いて歩き出した。

「俺は着替えてからスクラップ置き場だ。一緒に行くぞ」
「あの、私は別に」
「覚えがある奴だったみたいでたまり場所も知ってるとよ」
「聞いてます?」

のしのしと歩く難波さん。
何でこうも皆すぐに動いてくれるんだろうか。
私が副頭の彼女だから?…と思ったが副頭の彼女の頭を鷲掴みにする仲間だ…それだけではないだろう。



「おう名無子!殴った奴はこいつか?」
「いや…鉄生君、私が見た彼の顔はこんなボコボコではなかった気が…あと叩かれただけだよ」

難波さんのバイクの後ろに乗せてもらいスクラップ置き場に行くと、黒の皮ジャン集団の中に正座させられている人がいた。
其処には昨日の人がいて、なんとまぁ顔が腫れていたり痣ができていたりととにかく悲惨な姿だった。

「いやよぉ、清広の奴たまり場に着くやいなや1人でずんずん行っちまってよぉ…」
「原型留めとかなきゃ名無子ちゃんが確認できないだろうって言ったんだけどな」

ハハハと笑う鉄生君と将太君…何この笑いあふれる職場ですみたいな雰囲気…

「名無子」
「わっ!清広…」
「痛いか…?」

壊れ物を扱うかのような仕草で私の左頬を覆う清広の手。
表情はとても悲しそうで、いつもの清広じゃないみたい。

「今はそんなに…えっと、ごめんね?皆にこの人探させたみたいで」
「悪かった」
「えっあ、そんなに反省する程じゃ…」
「…馬っ鹿お前!そのことじゃねぇよ!」

何で切れるんだ!
あの清広が謝ってると珍しがっていたが何か違うらしい。

「俺があのあとすぐに追ってればお前怪我せずに済んだだろ」
「…でも、いつものパターンからして…」
「だから!追ってれば怪我せずに済んだだろ!だから悔やんでんだよ!」

何故いちいち切れるんだ!ツンギレか!
でも、こんなに清広が私を心配してくれるとは思わず、自然と笑が溢れた。

「フフ…たまには怪我するのもいいかな」
「やめてくれ…」

皆の前でお構いなしに清広に抱きついてやると、「離れろ馬鹿!」と言いつつも優しく抱きとめてくれた。
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