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□機嫌直しの言葉
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ふと部屋にあるカレンダーを見るともう4月下旬だった。
そういえば今年はイベントに乗らず何も嘘をつくことなく過ごしたことに気がつく。
これは勿体無いと思い、日はずいぶんと過ぎてしまったが4月中に味わおうと読んでいた本から視線を外し、隣で雑誌を読む光義を見た。

「光義」
「ん〜?」
「別れよう」

また自分が読んでいた本に視線を向け、数秒経って「嘘だけどね」とちゃんとネタばらし。
本の行を読み進めていると鼻水をすすったような音が聞こえた。
光義は風邪でもひいていただろうかと思いまた視線を彼に向ける。

「…どうしたの?」
「どうしたっじゃ…っねぇよ…」

強面でいつも眉間にシワを寄せている彼の顔は今にも涙がこぼれ落ちそうなほど目を潤ませ、鼻は赤かった。
先程の鼻をすする音とこの表情からして…

「え…泣いてるの?」
「っせぇ!」

乱暴に雑誌をそこら辺に投げ、光義は私に背を向けてしまった。
ちゃんと嘘と言ったけど彼には軽く聞き流す程の言葉ではなかったみたい。
私も本を閉じて近くの机に置き、体ごと光義に向ける。

「あの、ごめんね…?」
「なんで突然言うんだよ…」
「いやぁ、エイプリルフール何もしなかったなぁと」

「とっくに過ぎてるだろ!心臓に悪いわ!」

完全に拗ねてしまっている。
私が悪いのだけれどそこまで受け取る程なのかな。
でも嘘をついていい日だからこそそうじゃない日にやるのはイベントに乗ったとは言わないね。

「機嫌直してぇ〜よしよ〜し」

そっと彼の背中を抱きしめ、顔を覗く。
わぁブルドックみたい。
ちらりと私と目を合わせ、前に視線を戻し、また私を見た。

「嘘じゃなくてもよ、俺は別れねぇから」

ほんのりと顔が赤いのは照れてるのか泣いたからなのか。
冗談を本気と受け取ってしまう程単純なのか真っ直ぐなのか。

「だから別れる気はないって。私には光義と結婚して月本不動産を一緒に経営していくという将来設計があるんだから」

2人の今後について私の予定を聞いた光義は、顔を真っ赤にさせてしばらく私を見たまま動かなかった。

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