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□惚れた弱み
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「好誠、ちょっと胸揉ませてくれない?」
「遊びに来て開口一番がそれか」

幼馴染みの名無子は変わっているというか、馬鹿正直というか…全てにおいて直球な奴だ。
そして 名無子が一番好きなもの、それは…

「おぉ、好誠!また筋肉ついたね!いいよ!実に喜ばしいことだ!」

ペシペシと軽く叩かれていたのも束の間、次第に感触を確かめるように俺の二の腕を揉み始める。

「やめろって」
「いいじゃん減るもんじゃないし」

こいつは筋肉が好きらしく、会話中でもずっと揉んでくる。
毎回そんな事をしてるわけだが…よくもまぁ飽きないもんだ。
小学生の頃はそんなでもなかったが、中学に入りだんだんとエスカレートしていった。
断りもなく触ってくるのはもう普通になってきている。

「それでね好誠、胸を揉ませてくれないか」
「男の胸揉んでどうすんだよ」
「胸を揉まれるのは女に限ったことではない!男には雄っぱいというものがあるんだ!!」
「お、雄っぱい…!?」

何を言ってるんだこいつは。
俺の幼馴染みはこんなにも変態じみた奴だっただろうか。
花で冠を作り可愛らしい笑顔をしていたあの頃のこいつが懐かしい。どうしてこうな
った。
俺が名無子の華やかしい時代を思い出していると、視界が暗くなった。

「は!?」
「揉ませろください!」

突如名無子が俺に覆いかぶさり胸に手を伸ばす。
持ち前の反射神経で名無子の腕を掴んだはいいものの、崩れるように2人床に転がった。

「やめろって!おまっどこにこんな力が…!?」
「そのタトゥーはなんなの!?腕から胸元に続くタトゥーはセクシーの何者にもないよ!?あとタンクトップという体のラインが出る服とか更に際立つよ!?つまり揉ませろ?」
「名無子…!」

こいつの執着、計り知れない…。
だがそこは男女の差、俺は少しばかり力を入れ起き上がり、ベッドに寄りかからせるように名無子を押し付ける。

「名無子、落ち着いてくれ…」
「好誠、揉ませてくれ…」

ふざけてんのかこいつ。
いや実際こちらから見ればふざけているが、なんでこんな事にそんなマジな目してんだお前…こっちの身が持たねぇよ…
どうすればこの話題から抜け出せるか考え、思いつく。

「名無子」
「ん?」
「俺が揉まれて何か得はあるのか?損するのは俺だけだよな?」
等価交換。
そんなモノを出してみる。
俺の胸揉むならお前の胸も…って変態か俺は。
だが、こう言えばさすがの名無子も悲しい事ではあるが嫌がって…

「揉まれ損?あぁなら私の乳でよければいくらでも揉んでいいよ。よし!じゃあ揉ま」
「すまん今の無し」

危機感を持て馬鹿!
なんとなくチャンスを逃したがこいつとはそんな軽いやり取りをしたくはない。

「どうすれば揉ませてくれる!?」
「なんでお前が怒るんだよ」

今の様子からして諦める気はないようだ。
…別にこいつにだったらいい…揉まれても。
俺は名無子に幼い頃から惚れてんだ、いいんだけどよ…
名無子にとっては俺は幼馴染みだ。それ以上の感情はねぇと見てわかる。
こいつは揉んで終わりかもしれないが、俺はそこで終われるかわからない。
人の気も知らなねぇでこいつはいつも…いつも…

ため息をした俺とは反面、名無子は何やら思いついたようで「そういえば!」と発した。
両手で拳を作るこいつはなんとも可愛い…

「鳳仙のキングジョー君てさ、体格いいよね」
「そうだな」
「……」
「……」

バッと名無子が立ち上がった瞬間、素
早く腕を掴み阻止する。

「えぇい!離せ!私は死ぬまでにムチムチの雄っぱいに顔を埋めると決めたんだ!」
「目標変わってるぞ!だが聞いたからには行かせるわけにはいかねぇな」

本当にやめてくれ。
惚れてる女を他の男、しかもあいつの元に行かせるわけにはいかない。
俺の手が一向に離れないことに諦めがついたのか、座り直した。
すると俺の顔の目の前に手を持っていき、指でピースサインを作る。

「二択やろう」
「ちょっと待て、これ俺が折れなきゃなんねぇのか?」
「1つ、好誠が胸を揉ませてくれる」
「聞けよ」
「2つ、キングジョー君の乳を差し出す」
「この場にいない奴を巻き込むなよ」

凛とした表情の名無子は綺麗だ…て、考えてる場合じゃない。
尚も俺と目を合わせる名無子は答えるまで逸らさないだろう。
なんでこんな奴に惚れたんだか…
俺は諦めてしっかりと掴んでいた名無子の腕から手を離した。
そしたら飛び切りの笑顔を俺に向け、距離が近くなる。
こいつが他のとこへ行かないようにこういった事でしかいまだ動けない自分が、情けなく思う。

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