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□平凡は当分休息
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男に引かれるまま、私は倉庫に連れてかれた。
こっち方面は来た事ないなぁ…。
古くて錆付いてて、扉を開ける際ギギギと音がした。
…此処で何するんですか!?
ミンチ?八つ裂きにされるの!?
そう思うやいなや瞬間、私は足を止めようとした。
だが腕を引く力に負け、前のめりになりそうになった。
無駄な足掻きですか、そうですか。

「そいつか?」

顔を前に向けると、数人の男性がいた。
皆同じ制服で、違うのは角刈りの人だけだ。
終わった…怖い怖い怖い。

「あぁ、間違いねぇ」

坊主の方がそう答えた。
間違いです!間違いだと言ってください!
私はただ純粋に、正門にいた貴方が怖くて裏門から出ただけなんです!
貴方を見た事なんてありませんよ!
これを口に出せればいいのにと、いつも思う。
そんな事を頭の中で巡らせていると、ヒュッと云う音がした。
ハッと、トリップしていた私はその音で帰還。
同時に靴に何か当たったような気がして、私は顔を下に向けた。
足元には1枚の写真。
知らない男性が写っていた。
目線はカメラではなく、手前には木があった。
…もしかしてもどう考えてもこれは盗撮と云う類な気が…
じっとその写真を見ていると、1番奥にいた人が口を開いた。
その人の髪は白くて、白地に黒のラインが入った制服によく似合っていると思った。

「そいつを調べろ」
「…え?」

何を言い出すんだ、この人は。
面識もない人を調べる?私は諜報員でも何もないのに。
たった1枚の写真で調べろって…そんな無理難題を…
そもそも、何故私が?
ただの一般人にやらせる方が時間掛かると思うけど!
え?皆さん忙しいからですか?
そこで私が坊主さんに接触?したから『お、調度いい』みたいな?
迷惑だ、そして怖い。
怖い、怖い、怖い。


これほどと云う恐怖を味わった事はない。
何故私なんだ、別に私じゃなくてもいいだろと反発したいくらいだ。
いつも心の中では強気でいるが、小心者の自分はそれを実行する事はできなかった。
小学生の頃は比較的積極的だったが、中学に上がるにつれだんだんと大人しくなっていった。

いつからか私は、ただ何の変わりもない平凡な日々を過ごしたいと願うようになった。
危険満載で濃い日なんて1日で十分。
そう思った日はもうずいぶんと前のように思えてくる。

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