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□君に特別任務を授けよう
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嗚呼、泣きそう。
目頭が熱い。
先程よりそう時間は掛からない気がする。
私は下を向く。
見るな、私を見ないでください。

「いいバイトだぜ?」

坊主の方が口に出した。
危険なバイトなんかしたくない。
だったら貴方がやればいいじゃないですか。
ブツブツと(頭の中で)呟いていると、ガタッと音がした。
その音にビクッと体を震わせる。
一番奥に座っていた白髪の人が立ち上がり、こちらに向かってくる。
その人は私の目の前まで来た。
高そうな靴が視界に入り、同時に私の片腕が軽くなった。
角刈りの人がようやく離してくれたみたい。

それもつかの間。
目の前の人に襟を掴まれ、引き寄せられた。
ちょ、少しは手加減を!
だが結局無理矢理顔を上げさせられる。
サングラスで目が合わないのが唯一の救い。状況は救われてないけど。

そして、近い。
何故不良な方達は極限まで顔を近づけるんですか。
一歩間違えれば危ないですよ。
違う意味で私の心臓はバクバクします。

「こいつが1人になる時間を調べろ」

何するつもりですか。
結論だけ言わないでください。
なんて勝手な人なん…あれ?
この無駄のない口調かつ一方的な発言。
機械越しからだったから気付かなかったけど、この声。

「貴方、電話の…」
「ちゃんと届けねぇ罰だ」

最悪だ。
まるで私が悪いみたいだ。
確かに人を使ったけど、こんなの…
そして思った通りの人だなんて、ね。
素直に届ければよかったのか?
でも時間も大分経ってたから本人に届けた方が制裁をくらうような気がする。
…どの道こうなる事だったのだろうか。
遅いか早いかの違いだろうか。
だけど、私はこんな危ない人達に関わりたくない。
この写真に写っている人を調べただけじゃ済まなそう。
今なら間に合う、かも。

「わ、私…」
「お前に拒否権はねぇ」

え、せめて二択じゃないの?

「期限は一週間後だ」

バッと手を離し、その人は倉庫を出て行った。
初対面、赤の他人にここまで物を言う人は初めて見た。
携帯電話を拾った事に対しての礼はなく、逆に私が貰ったのは無茶な依頼めいた命令。
そして私に拒否権はなく、あるのは一週間と云う期間だけ。

まるで鬼、だ。

そう云う単語が浮かんだ。
むしろ代名詞でいいと思う。
今だに出入り口をぼぅっと見ていると、肩が重くなった。
それは坊主の人の手だった。

「ま、頑張れや」

なんと勝手な人達なんだ…

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