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□誰かの心配をしている場合ではない
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翌日の放課後、正門に不審な人物はいなかった。
傍らで「昨日の人、何だったんだろうね」とやはり気になっていた人がいたようだ。
あれだけ目立てば(失礼だが容姿が)気になるのもしょうがない。
何より安心したのは、私が関与している事が知られてない事。
あんな事は1回だけにしてほしい。
さっさと頼まれた(強制)事をやって、あの人達とおさらばしたい。
しかしどう調べればいいか分からない。

1人になる時間と云う事は、バイトが終わった帰り道とか?
…何する気なんだろう。
せめて何処で写真を撮ったか聞けばよかった…
でも結局怖いから聞けなかったと思う。
怖い、本当に怖い。
学校を知られてるのが何よりの失態…
と云うか、それができるくらいなら1人になる時間帯を調べる事もできるんじゃないですかー。
やはり手が足りないと云う理由とかですか、そうですか。
翼に相談した方がいいかな…いや、やめておこう。
巻き込みたくない、翼は関係ないんだ。
とにかく、写真に写っていた人を見つけなければ…

バイト中、そんな事を考えていた。
勿論お客さんが来た時はちゃんと仕事をこなす。
疲れた時は甘いもの…スタッフ割引でシュークリームでも買って帰ろうかな。

私がアルバイトをしているお店はケーキ屋さんで、入り口でケーキを買ってお持ち帰りもできるし最初にケーキを選び置くに設置しているスペースでちょっとした喫茶店として過ごすこともできる。
あと一時間で仕事も終わると思っていたら新たなお客さん。
「いらっしゃいませ」と営業スマイルをし…え…

「俺モンブランと紅茶」
「んーどれにしよっかなー」
「早くしろって」

写真に写った人は、すぐに見つかった。

*

「えっと、バイトの時間帯は6時から9時…で、家からお店までの時間は…徒歩40分で、自転車で20分掛けてます…」

手帳に書いたメモを、私は読み上げた。
凄くドキドキした。
普段口数の少ない私にとって、どんなに短い文章でもつっかえる。
あと緊張。
皆さんの耳と目が私に向いていて、息が詰まる。

「以上、です…」

報告を終えると、目の前のお山はこれからの事を皆さんに話した。
私は邪魔にならないよう、あと聞いていませんよオーラを出して端に寄る。
あとは自分は間違った事は言ってないよね?と思いメモを読み直した。

今までわからなかったが、写真に写った彼はケーキ屋の常連で意識してみたらそういえばよく来てたなと思い出す。
バイト中にケーキをテーブルに運ぶ際、話しかけられこれはチャンスだ!と思い勇気を出して世間話の中から探り当てた。

「あの、よく…来てくれてますね…ケーキお好きなんですか…?」「え!そ、そう!俺ここのケーキ好きでさ!バイトない月曜と金曜は来ててさ…!」わぁもう、ごめんなさい…ほんとそれにつきる。

これは間違っているはずは、ない。
彼も正直に話している様子だったので…ああもうほんとごめんなさい…情報漏らしてます。
私は目の前のお山に、必要な事だけを報告した。
癖とか好きな物を報告しても、それがどうしたと言われそうだ。
この人は彼に一体何をする…いや、察するけど。
可哀相に…こんな怖い人に狙われるなんて。
ただただ罪悪感が増えていく。
携帯を見つけなければ結局は誰かに調べさせたんだと思う。
そして携帯を見つけなければ私はこんな事をする事はなかった。
でもこれで私は自由になれる!
思えば、長い一週間であった…
この人達が彼に何かしちゃった後、彼はまたケーキ屋に来てくれるのだろうか。

でも、こんな事はもうない。
明日からまた私の生活は平凡かつ、平和な日々を送るのだ。
普段通りにバイト行って帰宅して、本を読んでネットして…

「おい」

明日からの家での過ごし方を巡らせていると、声が掛かった。
この声で一瞬にして静かになった倉庫内。
顔を向けると、皆さん私に向けていた。
……怖い。

「もういいぞ」

と、云うことは…
私はお辞儀をして、そそくさと倉庫を出て行った。
早足でその場を離れ、体は震えていた。
この震えは恐怖とかそう云うのではなく、溢れる思いを必死に抑えている震え。
じ、自由!私は開放されたー!
体では表現しないが、心の中で私は走り回っていた。
うんでも、来週から別の道で登下校しよう。

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