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□彼ら以上に恐かった
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彼等は今日も今日とて作戦会議。
私は今日も隅で気配を消す。
昨日と同じで、私からは何も言う事はない。
それなのに帰宅中、またガガさんに捕まった。
なんかもうあれですよ。
ガガさん、私のお迎えに来ていますよね?
私がいつ貴方達とお友達に?

友達以外に何かあるだろうかと考えると彼らの様子でたちまち私の顔は真っ青になる。
…共犯!私もこの件については共犯になるんですか!?
もももしかして、俺達の企みを知ってタダで済むとごにょごにょみたいな!?
こ、これだから不良は!でも怖い、口に出すのが怖い。
思うのはタダ、タダです。
だけど、昨日のあの言葉が気になる。

誰ですか天地って…
何故真顔で言う、そして周りの人も肯定なんですか。
いつの間にか私に付き合っている人がいたんなて…
ただ私が気付かなかっただけなのだろうか?
告白なんてされた覚えないんですけど!
…この中、の誰なんだろう。
皆さんが納得する人って?

「じゃあ、明日だな」
「あぁ」

…明日ついに実行するんですか。
嗚呼、ご愁傷様!
話が終わると、皆出入り口に向かう。
私も少し間を置いて、倉庫を後にした。

*

皆さん各々分かれ道でさよならしたので、私もこっそり道を外した。
…本屋でも行きますか。
モヤモヤを消してくれるのは癒しの本屋しかない!
道の角を曲がろうとしたら、ものすごい勢いで人が現れた。

「っう!」
「っ…」
「ご、ごめんなさ…あ…」

反射的に謝ろうとしたが、言葉が止まった。
私は今、誰にぶつかった?
忘れるわけない。

「…ってぇな。何処見てん…あ」

数日間、見てきた男だから。

外で会うのは初めてだ。
彼も仕事服以外でも私だとわかったらしく、乱暴な口調がとたんにやわらいだ。

「君…!外で会うのは初めてだね!」
「う、あは、はい!」

どうしよう!そして明日貴方は謎の集団に何かされます!
貴方の情報ダダ漏れさせたの私ですごめんなさい!
という事なんて言えるわけもなく、消えかけていた罪悪感にまた押し潰される。
ひぃー!どうしよう、どうしよう!

「ねぇ、今暇?これからお茶でもしない?」
「あ、あのその…」
「…ダメ?」

つ、捕まった。
腕ぇ!腕捕まれてる!
そして、どんどん男の力が強くなる。
痛い、痛いよ…
恐、い。
視界が歪んだ気がした。
目頭も熱く感じる。
喉も痛い。
身体も動かない。
脈も速い気がする。
思考を巡らそうとしても目の前の事で何も浮かばず、ただ心臓が、大きく強く動いているのがわかった。
俯いて、目を瞑る。
目を瞑っても、どうにかなるわけでもないのに。
顔なんて彼らに比べれば全然怖くないのに。
どうなるんだ、そう思った。

鈍い音が聞こえた。
目を開けると、飛んだ。
私ではなく男が。

「っぐぁ!」

バイクでも突っ込んで来たと思った。
しかし、そう考える暇もなくその勢いで、私も倒れそうになった。
だけど一瞬ぐらついただけ。
胸の下に、腕が回ったからだ。

「大丈夫か?」
「ガガ、さん!?」

意外と紳士的要素があったんですね。
でも、何故こんな所に?

「あの…ありがとう、ごいざいます…」
「それは天地に言え」
「え…」

ドカッ

「ん?」

ドカッ

先程から音のする方へ顔を向ける。
そこには、ここ最近毎日見る人の後ろ姿があった。
彼の足元には例の男。
男を吹っ飛ばして更に蹴りを入れている。
そ、そこまでやらなくても…
もう動いてすらいないんですが!

「寿、その辺にしとけよ。そいつ気絶してんじゃねーか?」
「白目だぞ」

金髪ジャージと坊主の方もいたんですか…
まさか、私の後なんてつけてた訳じゃないですよね?
囮!?私は囮だったんですか!?
胸のしたが緩くなり、ガガさんが支えを解いた。
それと同時に先程までの緊張やら恐怖などが消えた。
どっと疲れた気がする。

「支え、てくれて…あの」
「気にすんな」

頭に手を乗せられた。
おっきな手だなぁ…となんとなく思った。

ゾクッ

急に寒くなった。
振り向くとそこには鬼がいて、私をサングラス越しに見下ろしていた。
また一気に緊張が高まる。
不思議と、恐怖は自分でも何故だか感じなかった。
何故だろ…?
あと、ガガさん達の口から出てくる「天地」と云う名字。
「寿」は多分名前…ですよね?
ぼぅっと見ていると、彼が腕を挙げた。
反射的にビクッと、身体が反応した。
そして、叩いた。
私の頭…の、上を。

「…なんだよ」

ガガさんの手を。
私の頭からガガさんは手をどけると、同時に彼が手を置いた。
だけど、彼は口を開かない。
この場合私から言うべきか!?
そうだ、お礼を言わなければと顔を上げる。

「……」
「……」

また伏せる。
……こ、怖い。

「もう…」
「…?」

彼が口を開いたと思いまた顔を上げると、思いのほか顔が近かった。
瞬間私は固まってしまったが、彼の顔は私の顔の横…
耳に、彼の口元が向けられた。

「1人でうろつくな」

たったそれだけ。
それだけなのに、顔が熱くなった。
お父さん以外の異性が、こんなにも顔が近い事なんて初めてだ。
し、心臓がバクバクする。
音が聞こえそうだ…
とたん、頭の上が軽くなった。
彼が私から離れ、前を歩きだした。
どうすればいいのだろう。
追う、べきなのだろうか?
反対方向に進むのは気が引ける。
でも、感謝の言葉を言わなくては…
自然と身体は動いた。

「っあの!」

そう若干叫ぶと、彼は止まった。
何故かそれに一瞬止まったが、めげずに小走り。
ようやく辿り着くと、少し俯きながら私は口を開く。

「あの…ありが、とう…ございました…」
「……」
「天地、さん…」
「……」

初めて彼の名を口にした。
まぁ、それを知ったのは先程だから。
…恥ずかしい、何故かわからないけど恥ずかしい。
きっと私の顔は赤いだろう。
別に告白じゃないのに、なんでこんな熱いんだ。
そう思っていると、またも彼…天地さんは歩き出した。
彼の後ろ姿に、私に何かが芽生えた。
なんとなくだけど、彼の後を少し小走りで追う。
自分の口端が、ほのかに上がっているような気がした。

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