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□2、3段飛び越えて
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「見て拓海君!友達にやってもらったの」
「ネイルアートか。すごいね」
「似合う?」
「うん、似合うよ」

細く色白い手。爪には星がほどこされたネイルアートが一層名無子を惹き立たせる。
俺は今日もまた思ってもない事を言っちまうんだ。

「なんだ名無子、シャレた蹄だな」
「はぁ!?ネイルアートだし!」
「似合わね〜!」
「拓海君は似合うって言ってくれたもんね〜」
「拓海は慈悲深いからな」
「なんだとコノヤロー!!」
「おうおう怒ると更にブス度が上がるぞ」
「拓海君と比べたら迫田の顔面も絶望的だからな!?」
「なんだとブス!」
「なんだよブス!」

いつもの口喧嘩が始まり拓海はやれやれとした顔をしている。
俺も素直に似合うって言えればいいと思いつつも、俺らしくない事は言えない。
あと名無子は決してブスなんかじゃない。
むしろ可愛い顔してるし怒った顔も可愛い。
ただでさえ可愛いのにネイルだかなんだか知らねーが、それ以上可愛くなってどうすんだ。

こいつとは小学校からの知り合いで、こうしてなんでも言い合える仲なんだ。
なんだかんだでこの距離に心地よさを感じる。
名無子も
名無子で言われ慣れているため凹む姿はないし、次の話題にでもなればコロッと機嫌が直り俺に絡む。
一生この距離が続けばいいし、お互いに恋人なんていらないと思ってるだろうから。



「迫田いる!?」
「ノックしろよ」

小学中学と学校が同じでよくつるんだが、高校に行ってから俺は下宿暮らし。
だが俺に懐いてるといっても過言ではない名無子は週4ペースで下宿先の梅星家を訪れる。
マリ姉達とも仲が良く、晩飯食って帰る事も珍しくはない程よく来るんだ。
そして、必ず俺に会うのが目的。
もうお前此処に下宿しろよといつも思うが、俺のために足を運ばれるのも悪くない。

部屋に入るなり俺の隣にすとんと座る。
何か言いたいのか、手いじりをしながら少し迷っている様子。
やめろ可愛い。

「今日学校で告白されてさ」
「はぁ…!?お前に告白する奴なんていんのか!?」
「おい!」

マジかよ。
口からはそんな事を言えてるが内心俺は焦った。
いやでも当たり前か。名無子は性格良いし顔も良いし花達も名無子に好意を持っている。
そして名無子の隣にはいつも俺がいるから好意以上の感情持っていて
も手を出す奴はいない。
…いたら俺が成敗する。
だが、俺と名無子は同じ学校ではないため全てを防ぐには限界がある。

「はっ、でもよぉフッたんだろ?お前みたいなじゃじゃ馬に惚れるなんてそいつも物好きだな」
「…う…て…」
「あ?何だって?」

こいつのことだ、断るに決まってる。
そう踏んだんだが、ボソボソと言ってて聞こえない。
まさかな。

「付き合うか…迷ってて…」
「は…」
「あたし、可愛いなんて言われたの初めてで…とても嬉しかったんだ」
「……」
「それでね、デートしてみて…この人いいなぁーて思ったら付き合おうかなって…」

「一応、迫田に報告!」なんて、顔を赤くする名無子は今日一番可愛い。
俺のせいだ。本当はすげー可愛いのに俺のいつもの言葉によってこいつに自信を失わせてしまった事以上にそう思い込ませてしまったんだ。
結果何処の馬の骨ともわからん奴から可愛いと言われただけでコロっと落ちちまうなんて。
慣れてない言葉に照れる名無子の姿は可愛い。すげー可愛い。

言え。言うんだ。
言わなきゃこいつは他の男のとこに行っちまう。
好きだ。本当は可愛いと思っている。俺と付き合って
くれ。
言うんだ!

「名無子」
「ん?」
「結婚しよう」

混乱のあまり色々吹き飛ばしすぎて先走ってしまった。
やっちまったと俺は今顔が赤いんだろうな。
だけど、名無子の顔はさっきよりも一層赤く染まった。

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