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□来世まで予約済み
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「龍信君てほんといい男だわ…」
「…ありがとう」

ブライアンでは時々お茶をする程度の私だったが彼ら、武装戦線と出会ってからはすっかり常連になった。
中でも九能龍信という男が大のお気に入りである。
かっこいいし性格もよしそして強い。
正直者の私はすぐ思った事を口に出すので、最初は戸惑っていた龍信君も今ではもう慣れてしまっている。
それは武装メンツも同じで…

「なんかもう既に告白通り越してるよな」
「だな!もう付き合ったらどうよ?お互い相手いないんだろ?」
「いやいやいやいや」

ゲン君と鮫島君がはやし立てるので直ぐに制す。
いくら万が一、いや億に一つ龍信君が付き合ってもいいと言う事があろうとも私は付き合えない。
そうだな、付き合えるなら…

「付き合うとしたら来世ぐらいかな…」
「は?」
「いやね、例え私が龍信君と付き合える事になっても現世の私では龍信君と釣り合わないのよ…私に龍信君は勿体なさすぎてさ…だから来世の私は知性がある美人に生まれたい」
「いやいやいや!」
「今を生きようぜ名無子ちゃん!」

こうして龍信君と同じソファ、しかも隣に座れるだけですごい事なのに彼女になるなんて世の中の女性に
申し訳ない。
龍信君には黒髪美人のセクシーな彼女が似合うと思うんだけどどう?

そう返事をした私に皆は「なんだこいつ」でも言うような顔。
ブライアンで武装戦線に近づくのは私しかいないが、それ以外はわからない。
逆ナンでホイホイ付いていく龍信君は想像出来ないのでむしろ大和撫子のような…

「あ〜でも来世でまた龍信君に会えるかわからないよね…それに龍信君は彼女7人くらいいてもいいと思うの!私8人目の彼女になりたい!」
「彼女8人て…1週間じゃ足りねーじゃん!」
「鮫島!注目するとこはそこじゃねーだろ!」

2人がわいわいしている中、先程からずっと静かだった十三君に「名無子」と呼ばれた。
「何?」と応えると彼は吸っていた煙草を灰皿に押し付ける。
そして私の目をじっと見つめる姿はさすが十三君というか、こんな風に見つめられたら落ない女の子はいない。

「俺は今の名無子が好きだ」
「ありがとう!私も今の十三君が好きだよ」
「来世は龍ちゃんの女になるんだろ?じゃあ現世では俺の女にならないか?」
「いや十三君も私には勿体ないから」

慰めてるのか?せめてもの慰めで言っているのか?
十三君は容易にいつで
も彼女います寄ってきますと想像できる。
いやしかし、こんないい男に冗談でも言われるなら生きている内に…言い方は少々下品だが味わいたい。
ちょっと私が悩む仕草をすると十三君は口の端を上げる。
やっぱり楽しんでるなこの色男!

すると膝の上に乗せていた手に誰かが被せてきた。
位置からして龍信君。どうしたの。

「名無子は…十三の彼女になるのか…?」
「えっいや冗談だよ。ね、十三君」
「いや本気」
「十三君、龍信君は冗談話とか得意じゃないから!」
「名無子」

ほら龍信君が本気にしちゃってるから!
そしてもし十三君の彼女にでもなったら私は世の女子から辻斬りに遭うんじゃあないだろうか。
呼ばれたので龍信君の方を向く。
あまりサングラスを外さない彼の目はいつも何処を見ているかわからないが、今は間違いなく私を見ている。

「俺も…今の名無子が好きだ」
「ひいい!ありがとう龍信君!私も今の龍信君ほんっと好き!」
「俺との反応に随分差があるな」

そりゃそうでしょ。
勿論、十三君に好きと言われて嬉しい。
でもそれ以上に龍信君から言われるのは嬉しい。
こうして手を握ってくれるなんて更に更に。

私の好意に応えてないから罪悪感が増したのだろうか…そんなの気にしなくていいのに。

「だから、俺と付き合ってほしい」

うん…ほんと気にしなくていいんだけど…

おぉー!と凸凹コンビは盛り上がり、十三君は相変わらず何やら企んでいそうな笑み。
十三君はまだしも龍信君が軽いノリでこんな事を言うはずがない。
武装の四代目頭にここまで言わせてしまうなんて…私も罪な女と余韻に浸る。
龍信君に多少の理想像を作ってしまっているが、これは本気…本気で言っているのか。

「ありがとう龍信君っ…その言葉だけで嬉しいよ」
「…名無子は俺の事を好きと言っていたが、十三の方が好きなのか?」
「何言ってんの!大好きランキング1位は龍信君だよ!依然変わりなく!」
「…俺じゃ、ダメなのか?」

これは夢か!?
皆の前で言えるなんて流石!…私は決してふざけているわけではない。
このチャンス、逃すものか!
私の手を握っている龍信君の手を、両手で握りしめる。

「龍信君、絶対幸せにする」

視界の端に写る十三君はしてやったりという顔で、私と龍信君の距離に痺れを切らしているのは鮫島君とゲン君だけではなかった。

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