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□今更言うのも何ですが
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鳳仙学園は幹部以外は坊主?スキンヘッド?が原則なようで、頭髪検査しなくて先生方の手も省けるなと思った。
髪が伸びるの遅いのか、何だかんだでその髪型を気に入っているのか…幹部になっても皆が皆、髪を伸ばすわけではないようで。
てっきり幹部になったら好きな髪型になる!みたいな反動で長髪だらけになると思っていた。
スタイルが一緒なものだから後ろ姿見てもわからないしちょっと怖い。
髪型次第で印象が変わるとあるけど、彼らの場合髪型の条件は一緒だからあとは顔かプロポーションで勝負…
当然のように光政君は金髪ロングのイケメンになっていて…光義君も中々男前になって…そしてこの男も…

「おかえりください」
「おい閉めんな」

インターホンが鳴ったのでモニターで確認すると顔は見えず、代わりに引き締まった体が見えた。
「はーい」と返事をすると「俺だ」と詐欺まがいな台詞が返ってくる。
呼び鈴に私ではなく母さんが出たらどうするんだと思ったが、相手も誰の声かわかってるみたい。
そういえば久々に聞いたなと思いつつ玄関へ向かい、なんとなく覗き穴を覗いてみる。

「…誰?」

玄関の向こうにはてっきり同じマンションの階でお隣さんの真島君がいる
と思ってた。
だが今、扉を挟んだ向こうには知らない人がいる。
やばいな、返事をしたからには居留守はもう使えない。
このまま素直に開けてよいものかと奮闘していると「まだが名無子」と催促してきた。
声は真島君だ…もしかしなくてもこの人真島君…?
恐る恐る扉を開ける。

「おう」

イケメンだ。
目の前にイケメンがいる。

「おかえりください」
「おい閉めんな」

すぐさま扉を閉めようとしたが真島君らしき人が足を割り込ませてきたのだ。
やばい!このままでは取立てのような入り方で突破されてしまう!
咄嗟に扉を押すにもそれは叶わず、いとも簡単に入られてしまった。

「なんで閉めんだよ!」
「や、やめてください!知らない人は家には入れていけないと親から…」
「小学生かお前は!」

むぎゅっと片手で挟むように両頬を掴まれた。
ひいいイケメンの手が私に!
ずいと彼は私に顔を近づけ、柄にもなく思わずドキッとしてしまった。
そして「俺だよ、俺」とまたそんな詐欺師の手を…

「本当に真島君…?髪の毛がある…」
「まだ若いんだから俺だって髪ぐらい生えるだろ」

どうやら本人らしい。
パッと私の顔を離すとズカズカと上がり込
む。
うわぁ住居侵入!靴ぐらい揃えなよ!
「家の鍵忘れちまって」と言いながらまるで自分の家のようにくつろぐ真島君。
親同士の仲が良いため小さい頃はよくお互いの家を行ったり来たりはしていたけど、高校になってからは学校も違うしあまり遊ぶ事もなくなった。
隣に住んでいるのに意外と外で見かけないもんだ。
時々旅行のお土産とかで訪ねる時とかに会うぐらいで、高校生の彼を見た時本当に鳳仙はスキンヘッドなんだなと感動さえ覚えてる。
それにしても、しばらく見ない間に随分かっこよくなったもんだ。
高校3年だけど大人びてるし、体格もいいし…

「真島君てモテる?」
「いきなりなんだよ。モテたら苦労しねーよ」

自覚がないだと…!?
これだからイケメンは!

ソファに座り、テレビを観ている真島君にコーヒーを持っていく。
「サンキュ」と言って受け取る真島君の隣に私も座る。
何しても様になるなと思う…うん、ほんと今更だけれども

「真島君て、かっこいいんだね」

髪が生える今の今まで気づかなかった。
スタイルもいいから何着ても似合いそう。
素直な感想を述べると真島君の顔は見るみる間に赤くなった。
私と合わせていた目線を逸らし、テレビに
向く。

「名無子は…可愛いな」

ボソッと聞こえたその言葉に、表現するならばキュンッとしてしまった。
私もテレビの方に向けたが意識は真島君ばかりにいってしまう。
コツンと指に何かが当たる感覚がして、ちらと見れば真島君の手。
また視線をテレビに向ければ私の手を包み込むように握られた。
大きな男の子の手にますます脈拍が加速する。
そんな時に観ていられるか!となった私は真島君の方を向くと、彼と目が合った。
妙な気持ちになってしまうのは彼がイケメンだと気づいてしまったからなのか、彼を意識し始めてしまったからなのか。
テレビの音をBGMに、ぎゅっと彼の手を握り返した。

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