C+W

□愛情が足りない
1ページ/1ページ

さわさわと、カーテンから木漏れ日が覗く。
本日は晴天なり。出かけるには最適だが、せっかくの休日だというのに私は恋人の家で寛いでいた。
部屋の電気を点けるほど暗くはなく、のんびり雑誌を読んでいたんだ。
特に甘い雰囲気になったというわけではなく、むしろ私は雑誌にのめり込んでいたんだ。
なのに今、私は組み敷かれている。

「名無子…」
「取り敢えずどこうか軍司君や」

そう言うも軍司は一向にどこうとはせず、私の首筋に顔を埋めてきた。

「えっ?ちょ、何?盛ってんの?」
「…名無子」
「はいはい何でしょう」
「ムードって知ってるか?」
「それ今の軍司に聞きたいわ」

本当に、急に肩に触れられたと思ったら何も言わずゆっくり私をその場に押し倒してこうだ。
吃驚してムードも何もないよ!
もしくは盛んな時期なのか…

「名無子、俺と最後にキスしたのいつだ?」
「えー?1ヶ月前くらい?」
「俺らいつ付き合い始めた?」
「…1ヶ月前」

わかったぞ。
軍司はもっとスキンシップがしたいんだ。
起き上がると軍司はどいてくれたが、それでも彼の脚の間に入る形になる。
マジマジと彼の顔を見れば不貞腐れた
ような表情。
見かけは大人びてて(むしろ老けてる)も中身はやはり男子高校生なんだなぁとしみじみ。
私としてはこうして同じ空間にいるだけでとても楽しいのだけれど。

「しょうがない、キスしてあげるよ」
「まるで俺がせがんでるみてーじゃん」
「あれ?違うの?しない?」
「する」

もしかして彼女からの可愛いおねだりを望んでいたのかもしれない。
わぁ気づかなかったごめんね!
次は私から言うかと思いつつ、目を閉じる。
すぐに軍司の唇が触れ髭が少しくすぐった…

「んん!んんん!?」

柔らかいキスは最初だけで、頭と背中を彼の逞しい腕と大きな手によりガッチリとホールドされ離れることができず、次第に舌も入ってきた。
兎に角息!息ができない!
体は自然と後ろに下がるが軍司も一緒についてくる。
苦しいっ!ぐるじい!
我慢できず軍司の背中を叩くが応えてくれず、思い切って脇腹を殴った。
「ぐをおお!」と苦しんでる隙に腕の中から脱出する。
脇腹を押さえながらこちらを睨みつける彼はさすが鈴蘭五人衆と言われるだけあってすごい迫力が…

「名無子…」
「ご、ごめん。苦しくて咄嗟に…」

悪くない、私は悪くないぞ…窒息の危機だ
ったんだよ。
中断によってか彼女に脇腹をやられたショックなのか、軍司は私に背を向けゴロンと横になった。
す、拗ねてしまったのかこれ。

「ごめんよ〜軍司〜」
「……」

なんとなく覆いかぶさってみる。
顔を見ても彼は壁を見ているだけ。
こうなったら奥の手だ…

「ぐーんじ!」
「……」

チュッと頬にキスをして、また1つもう1つと落としていく。
次第に眉間の皺が少なくなり、ただ目を閉じている軍司になった。
肩を押して仰向けにさせる。おお、なすがままだな。
もう彼の表情は穏やかで、彼の顔を包み込む私の両手に手を添える。

「ご機嫌取りか?」
「直った?キスのチャージをしてあげよう」

頬から唇へと移動しても、軍司は大人しくしている。
普段あまり自分からスキンシップをしないため私の今のこの行動は珍しいんじゃないだろうか。
だから軍司も何もせず続けさせているのかもしれない。

「…これ以上続けると我慢できねーんだが」

ただ…しばらく間が空く分、突然の過剰摂取はよくないものだと感じた。

「それ以上はまたの機会にでも」

暴走しないよう、定期的に愛を捧げよう。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ