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□この時は混乱
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ぼんやりとした意識の中、眠りから覚める。
まだ少しまどろんでいて今また目を閉じればもう一度寝れそう。
パチパチと瞬きをして覚醒していく。
ふと、横向きになる目線の先に、肌色が伸びていてそれが腕だとわかった。
自分の腕ではない、男の人の腕。

大学生の私は高1になる弟がいて、仲が良い。
しかし今の年齢になってまで一緒に寝ることはなく、あっても昼寝くらいだ。

だから腕枕なんて初めてだ。痺れないのかな。
まだ動く気になれず、目だけで部屋を見渡す。
が、一瞬にしてまだ少し残ってた睡魔から開放された。

何処だ此処。

また腕に目を向けてまじまじと見てみれば弟の腕にしては太く逞しい。
私に恋人なんていないし、こういう事をするような男友達もいない。
急激に不安になるこの状況。
私の後ろで寝てる人は一体誰なんだ。

思い出せ。
昨日私は何をした。
どういう経路でこんな所にいるんだ。

「っ!」

ハッとして自分の体を触る。
…服、着てない…パンツは履いてる…
でも上は素肌…だが下半身に違和感はない。
どういう事なんだ、この格好この状況、一線を越えてしまったのか?
顔を少し上げるとベッドの下に散乱する男の服と自分の服。
そういえば、昨日は友達とお酒を飲んで…じゃあねと手を振って家に向かった所までは覚えている。
その後の事はお酒のおかげで…

「おはよう」

……悩んでないで高速でベッドから出て着替えて此処から出てあわよくば何も無かった事にさっさとしておけばよかった。
後ろで男が起きた瞬間、掛け布団で体を包みベッドから落ちるように距離を置く。
バッと見やるとベッドの上で上半身を起こして…下着以外何も付けていない男。
みるみるうちに血の気が引いていくのを感じた。
男は金髪でやばい奴とパッと見で思ったが、寝起きのせいもあり目はぼんやりとして優しそうにも見える。
腕からして逞しいと思ったが、男の体は腹筋も割れていて肩幅も広く分厚い。
まずい、まずい状況だ。
男はベッドに腰掛けるように体勢を変え、頭をぼりぼりとかいている。

「ご、ごめんなさい!」

咄嗟に出てきたのが謝罪の言葉。

「わたっ私!お酒入ると時々記憶が消えるというか…あのっ普段は決してこの様になるわけではなくなんと言いますか、尻が軽いわけではないんです!」

ワンナイトフィーバー。
この状況の中、なんちゃってとそんな事を思ってみる。

「何もなかったよ」
「へ?」
「俺達は何もなかったよ」

つまり、お互い昨日の事は無かった事にしようという…?
私としてはそれで全然いいんだが、こうもあっさりされるとそれはそれで…
何か私が勘違いしているのか、再度男は「いや、本当に何もなかったんだよ」と念を押す。
そっかー何もなかったかぁーやったぁ…
じゃあなんでお互い下着1枚なのか。

「とりあえず、服着ようか」

何で貴方はそうも冷静なんですか。
でも、どうやら彼は昨晩何があったのか知っているようで、私はただベッドから立ち上がる彼を見るしかなかった。

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