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□あれがラッキーアイテム
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両手で自分の顔を塞ぐ。
きっといや、今私の顔は間違いなく真っ赤だ。
恥ずかしさでいっぱいだ。

「ほんっとおおおおに!ごめんなさいっ!」
「いや、こちらこそ勝手に家連れ込んじゃって…」
「滅相もない!介抱ありがとうございました…本当に!」

取り敢えず事情を説明するよと服を着てコーヒーまで入れてもらった。
私の服はお酒臭かったので彼の服を貸してもらった。黒のTシャツに短パン…
てことはベッドもお酒臭くなってしまってるかも…うわあぁ

「ホント…脱がせてしまって…失礼しました…」
「俺だったからよかったけど、危ないから気をつけた方がいいよ」
「はい…あの、何かお礼…いやお詫びを…」

もう詫びに近い事をした。
だってせっかく親切に介抱してやったのにいきなり脱ぎ出して自分も脱がされて人の家のベッドで寝るという…
うん、ホントこの人じゃなきゃ…他の人だったら私危い目にあってたかもしれないね。

「気にしなくていいよ…そうだ、家まで送るよ」
「え!いや!いいです!申し訳ないです!」

どこまで親切なんだこの人は!
ああそれにしても恥ずかしい…全裸までとはいかないが裸を見られて…いや見せてしまうなんて…
しかも初対面の人に!

「そんな格好で昼間とはいえ歩かすわけにはいかないし。バイクだからすぐだよ」
「本当に…すいません…」

本日何度目かの謝罪。
いまだ沈んでいる私に彼は苦笑いし、服はここに入れなよと紙袋を渡す。
ありがたく使わせていただきますと言えばニコリと微笑む彼はとても優しい。
2人分のコップを片付けに台所へ彼が行っている間、再度部屋を見渡す。
ふと、目に止まった物があった。
白地で背中に文字が刺繍してある長い上着。
もしやこれは特攻服?
………特攻、服…て、まさかこの人暴走ぞ…

「よし、じゃあ行こうか」
「っはいぃ!」

突如また別の不安が生まれるが、この人とはもう会う事もな…あ…

「服、クリーニングして返します」
「ん?あぁ、いいよ服は。同じの沢山あるし」
「でも…」

たとえ暴走族だとしても、この人はとても親切で優しい人なんだ。
親切にしてもらった分、ちゃんと返さなければ。
彼は少し考える素振りをして、また爽やかに笑う。

「じゃあ俺の家覚えてたらいつでもいいから返しに来て」
「えっあの、不在の時は…」
「ドア前にでも置いといてよ」
「そんな事できませんよ!」

返すだけかもしれないけど、ちゃんと直接渡したい。
折れない私を見た彼は頭をポリポリとかいた。

「じゃあ、連絡先交換する?」

数少ない、といっても同じ班だから交換した程度の男友達以外に、男性の名前が電話帳に加わった。
赤外線で送信してる途中、「あ」と彼が声を漏らす。

「そういえば、名前言ってなかったね」

本当だ。送信し終わったのですぐさま電話帳を開く。
グループ表示にしているため、彼の名前はその他のグループにいた。

「鈴木名無子さん」
「中條アキラさん」

お互いに名前を呼び、なんだかおかしくなってクスリッと笑った。

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