C+W

□どれに使うかは未定
1ページ/1ページ

「なぁ姉ちゃん、何も俺は怒ってるわけじゃあないんだよ?すごい心配したんだからね?」
「ご、ごめんね恵ちゃん…」

家に帰ると異様なるオーラを出す弟が佇んでいた。
携帯はマナーモードにしていたため気づけず、履歴を見れば弟から30分置きに着信が入っていた。
そうだった忘れていた…いやでもあの状況では自分の事で精一杯である。

「本当に友達の家に泊まったの?それ、男物だよね?」
「ぁえっ!?と、友達のお兄ちゃんのなんだよ!」
「へぇ…なんで友達の兄ちゃんの服貸してもらってるの?友達のでいいじゃん」
「私よりもうんと小柄の子で…!」
「ふぅ〜ん」

怪しまれながらもなんとか納得してくれたようだ。
本当は酔っ払って自分を介抱してくれた見ず知らずの人の服を脱がせて自分も脱いでそのまま朝まで爆睡したなんて口が裂けても言えない。
このことは墓まで持っていくつもりだ。

実は中條さんに扉の前まで送ろうかと言われたが、バイクから降りてもらうことになるし何より弟と会ってしまうためアパートの前でお別れをした。
今度菓子折りを持って服を返しに行こう。

「本当にごめんね…友達と飲んでたらいつの間にか寝ちゃって…電話気づかなかったの」
「んまぁ、俺も遅かったし…でも次からはちゃんと連絡入れてよ?」
「うんうん!はい、私の事は終わり!次は恵ちゃんの番!」

家に帰ってお互いに驚いた。
弟は私が着ている服と昼帰り。
私は全身擦り傷やら痣だらけの弟。
怪我をしているにも関わらず、恵ちゃんはなんだか嬉しそうにヘヘっと笑った。

「実は俺、チーム作ったんだ」
「チーム?」
「ああ!武装戦線て言ってさ…」
「ブドウセンセー?」
「違う!」

どうやら昨夜はその記念すべき日の意気込みというか、別のチームと喧嘩したらしい。
しかも物凄い人数だったらしく、よく歩いて帰れたものだなと感心してしまった。
なんと武装戦線には中学の時ライバルだった永三君もいると聞いて吃驚だ。
それだけ恵ちゃんに惹かれたのだという事が何より嬉しかった。

「恵ちゃんがいるなら、武装戦線はいいチームになるね」
「おう!男、鈴木恵三!最高のチームにすると誓うよ!落ち着いたら皆を姉ちゃんに会わせるよ」
「ふふ、楽しみにしてる」
「でさぁ…」

気まずそうに俯く恵ちゃん。
先程まで楽しそうに話していたのに急に暗くなった。

「なんせ1年坊主がチーム作ったからさ、こっからがハンパないんだよね」
「どういうこと?」
「ペーペーがいっちょ前にっていうか…まぁしばらくは敵のチームに痛めつけられるから…怪我して帰ってきても心配しないでっていうのは無理でもさ、止めないでほしいんだ」

いつも何かと自由な弟だが、こんなにも私に断りを入れるのは初めてだ。
それだけの覚悟でチームを作って敵陣に突っ込んだんだ、軽いノリじゃないことは十分伝わった。

「無理はしないでね」
「ハハ、頑張るよ」

チームと聞いて、記憶の片隅に何かあるような違和感があった。
けれどそれが何なのかはわからず、今は目の前の弟の笑顔に釣られて微笑んだ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ