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□そこは安らぎ
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『俺がいいと言うまで絶対に扉を開けるな』

そう言って電話を切って数分、私はじっとうずくまりながら耐えていた。
手で耳を塞いでも完全に音は消せない。
すると、外からざわめきが聞こえてきた。
耳を澄ませれば慌てるような声。
とたんに扉を叩く音も止んだ。
嗚呼もしかして、これは…

「名無子さん」

こんなにも、この声に心が救われるなんて思わなかった。
震える足で玄関に辿り着き、躊躇なく扉を開ける。
優しく微笑む彼を見た途端、またなみだが溢れてきた。

「あいつらは帰らせたよ」
「ちゅ、じょ…さ…」
「怖い思いさせたね…ごめん」

何で貴方が謝るんですか。
そう言いたいのにうまく口が回らない。
中條さんは流れる涙を指で拭い、そっと私を抱きしめてくれた。
やっと安心できる。私はすがるように中條さんの背中に腕を回し、シャツを掴んだ。

家の中に入っても離れるのが怖くどうしようかと思っていると、胡座をかいた彼の上に座らされた。
彼の胸に頭を預けると、鼓動が聞こえ頭も撫でられて次第に落ち着きを取り戻す。
ポツリポツリと話す私に中條さんは静かに相づちをする。

弟がチームを作った。今、弟は貴方のチームと闘っている。
私はとても不安だ。弟が心配だし、闘っている相手の中に貴方がいる。

また涙が溢れそうになるも、堪える。
「あいつらやりすぎだな」と聞こえたが、どちらの意味かはわからなかった。
顔色を伺おうと顔を上げれば、また彼は微笑んで強く抱きしめてくれた。

「二度とこんな思いさせないよ」

数日後の夜、百鬼を迎え撃つと言って出かけた恵ちゃんはしっかりとした足取りで帰ってきた。
その時、言葉の意味を理解した。

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