C+W

□怖いもの見たさの理由
1ページ/1ページ

カップルが観に行く映画とはどんな映画だろうか。
大体がラブロマンスだとは思うが中にはアクションやコメディだってあるだろう。
1年や早くて半年待てばDVDで出るが映画館ならではの迫力は家ではなかなか味わえない。
名無子はその月にどんな映画がやるのか調べるくらいには映画が好きだった。
その映画の原作を知っていたり興味があれば友人と観に行くが基本1人映画を楽しむ。

「そういう時よぉ…」
「うん?」
「俺誘えばいいじゃん…」
「マサ…映画…観るの?」
「観るわ!何だよその信じられないって顔!」

ここのところ、といっても今月はやけに名無子の付き合いの悪さにマサは疑いの眼差しを向けていた。
日曜にデートに誘うもやれ友達と映画だやれちょっと1人で行きたいところがあるだ。
学校が終わったあと夕飯を一緒にとることしか時間がとれず、たまには何処か一日中名無子と痛いのがマサの本音だった。
もしかして浮気じゃないのかと食って掛かればあっさりと話したのだが、まさか映画に彼女との時間を奪われていたとは思いもしない。

「今月何処も出かけてねーんだけど?つーか今週で今月終わるけど?」
「ほぼ毎日会ってるじゃん」
「短けーじゃん!俺は何処でもいいから行きてーの!」

何をそんなにムキになっているのやら。
マサはコーラをストローでズビビッとすする。

「今月は観たい映画が沢山あってさ、上映してる映画館の時間とか…」
「俺より映画かよ」
「たった2時間弱じゃん」
「その2時間断られた俺は家で1人…」
「……」

なんだこの拗ねた子供は。
溜め息をつきつつも、これは誘っていいのか少し悩む。
内容が内容であるけれど、マサだったら嫌でも行くかもしれない。

「じゃあ…日曜日出かけない?」
「っ!…本当か!?」
「この映画がさ」
「映画かよ!」



やはり何を観に行くかまでは言わない方がよかったかもしれない。
いや、そんな事したら嬉しくないサプライズになってしまう。

休日の街は賑やかで、待ち合わせ場所に着くも人で溢れかえっている。
周りを見渡すと見知った短髪。
彼もキョロキョロと見渡していた。
普段制服はズボンだけで上は私服なため、これといって私服で好感度が上下することはなかった。
と、この間言ったらマサの家にメンズのファッション誌が増えていた。

「マサ〜」
「おう」

手を振る彼は嬉しいようでもあり…

「やっぱ映画やめる?」
「いや…行く!」

どことなく表情がかたい。
何故なら今から観に行く映画はホラー映画なのだ。
男のプライドなのか、俺ビビってます感は出さず平常心を保っている。
でも予告編を見たときのマサの顔は物凄くビビリ顔だった。

「でもこの映画シリーズもので前作と結構話繋がってるからわからないかも…この時間ちょうどやってるのはこの映画だけど、こっち観る?」
「いやこれ明らかに子供向けだろ」
「このアニメは大きいお友達に人気で…」
「大きいお友達!?」

かといって私はこのアニメは知識があるだけで映画は地上波でやってたら観るくらいだ。
でも映画は譲れない…!
いざ、映画館へ!
手を引かれてついてくるマサはホラー映画は好みではないというのが今日でわかった。



ニコニコと上映室から出てくる名無子。
ぐったりとしているマサ。
この映画のファンにとっては楽しめる映画で、ホラー映画が苦手な者にとっては耐え難いもののようだ。

「面白かったねー!」
「そう、だな…」
「もう!どうしたの」
「どうしたも何も…グロのオンパレードじゃねぇか!」
「喧嘩で血とか見慣れてるでしょ?」
「臓器なんて見慣れてたまるか!」

どうやら画面にいっぱいいっぱいで、ストーリーには集中できなかったようだ。
しかし続編のため話がわからないという事もあるので仕方がない。
私はとても楽しめたが、マサはそうではなくて少し申し訳なく思う。

「ごめんね、マサ…どうしても観たかったの」
「……」
「ホラー映画は友達も苦手な子しかいないから、いつも1人で観てたんだけど…マサと一緒でいつも以上に楽しめたよ」
「……」
「無理に観なくても…断ってよかったんだよ?気にしないよ?」
「…奴が…」
「ん?」
「好きな奴がどんなの好きか知りてぇ、じゃん…」

青ざめた顔はどこへやら。
顔を真っ赤にさせマサは明後日の方角を向いていた。

「マサ…」
「だからよ、1人で行くなら俺も行くし…」
「ふふ…ありがとうっ。次もマサと観に行く」
「おう」
「よし、じゃあナイトショーというものがあってだね」
「またホラーかよ!」

とは言いつつも、この日をきっかけにマサと映画館へ足を運ぶ事が格段に増え、だんだんと耐久がついていくマサであった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ