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□寂しがりやな貴方に
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「ゴミ付いてんぞ」
「あ!有難う御座いますっ!」
「一々反応すんなよ。取れねぇだろが」
「っ!…すいません」
「別に怒ったわけじゃねぇから!いい加減慣れろよ!」


寂しがりやな貴方に


「動くなよ」
「はっはい」
「お前なぁ…」

消極的で必要な事以外に異性と話す事がなかった私は、あの日から多少男性と云うか、この人達に慣れてきた。
だけどそれ以前にチキン(自分で言うのが悲しい)なので言葉使いや少しの動作にも反応し、悪い方に考えてしまう。
凄い怖いくど、皆根は優しいんだ…そう、ニヤつきながら人をいたぶっていても根は優しいんだ!
でもこんな私が会話を出来ると云うのが今までにない、大きな進歩。
自分から声を掛けるのはまだ勇気がいるけど…

「ほら、取れ」

ゲシッ

「あっ天地さん、どうしたんですか!?」

黒岩さんが私の髪に付いていたゴミを取ってくれたと同時に、天地さんが黒岩さんを蹴飛ばしてしまった。
何故?優しい黒岩さんが気に入らなかったのかな。
天地さんを見上げると、目が合った。
だけど「ひぃっ!」と小さく叫び、また元の目線に戻る。
今私の目線は天地さんの胸あたり。
そして天地さんの目は何故か怒りに満ち溢れていた。

どうしよ!きっと知らないうちに何かしてしまったんだ…
そして黒岩さんは八つ当たりに遭ってしまったんだ、後が怖い!
………まだ視線がつき刺さる。
横目で辺りを見るとガガさんがこちらを面白そうに見ている。
傍観者ですか!?助けてはくれないのですね!

スッ

うねうねと思考していると、天地さんが髪を触ってきた。
うわぁ!何ですかぁっ!いきなり!
先程ゴミが付いた所を触っている。
無言…無言は怖いからやめてほしい…

「…帰るぞ」
「えっ!は、はい」

口から出たのはそれだけで、天地さんはさっさと出入り口に向かってしまった。
私は横目で地面に横たわっている黒岩さんに罪悪感を抱きながら、ガガさんに一礼しすぐさま後を追う。
何をしてしまったんだ、本当に…
一段と殺気が漏れているのが後ろ姿でも分かる。
普段互いに会話をしなくても傍にいるだけで心地よいのに、今だけは胸と喉の間に何か詰まっているようで苦しい。
だけど、声を掛けるに掛けられない。
掛けてはいけない気がする。
隣を歩くのは怖いので、2歩ほど下がって付いていく。
一向に、天地さんは口を開かない。

…もしかして、嫌われてしまった?
きっとそうだ、だから怒っているんだ。
自分じゃそうじゃなくても、知らないうちに彼を傷つけてしまったんだ。
嗚呼どうしよう、私は何をした?
人に嫌われないよう常に気を張って相手を伺っていたのに。
嫌われたらこれ以上不に落ちる事はない。
そんな私は何時まで経っても泣き虫で、目尻に涙が溜まってきた。
鼻も痛くなってきて、そろそろ頬につたうだろうと思った時だった。

「……」

前を歩いていた天地さんが止まった。
振り向く事はないようだけど、どうしたんだろうか。
だんだんと視界がボヤけ、瞬きをしたらまたハッキリとなる。
同時に頬が冷たくなった。
うぅ…泣いてしまった。

「…別に、お前に対して怒ってるわけじゃねぇよ」

では殺気なんて出さないで下さいよ、怖いから。
なんて事は言えなく、でも何かに怒っているのは間違いない。
いいのですか?理由を聞いてもいいんですか?き、聞きますよ?
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