戦国話

□1.5.Her existence
1ページ/2ページ




   Her existence



秀吉様が天下を統一され、政治も戦も少しばかり落ち着いた時、秀吉様の正室、おねね様が見知らぬ娘を抱えて御帰還された。取りあえず人目のつかない部屋へと入り何ですかそれは、と問いただしたら、

「こら三成!女の子に向かってそれは無いでしょう!林の中で倒れてたんだよ!心配だから連れて帰って来たのよ」
と、何時もの小言と心配性、節介まで付いてきた。

「……不思議な身なりをした娘ですね。間者か…それとも……、
何はともあれ豊臣の敷地内でしたなら災いを齎す危険性も在ります。私は直ぐ牢屋へ監禁しておいた方が良いかと、秀吉様が天下を統一されたとはいえ、不穏な働きをする不埒な輩も出て来ますでしょう。そうなる前「全くこの子は…見た目で判断しちゃいけないでしょ?こんな女の子が間者なわけないよ」
「ですが!くのいちとも考えられます」
「あたしはそうは思わないよ。三成が豊臣の為、うちの人の為に頑張ってるのは十分に解ってる。三成だけじゃない、清正と正則もね。3人ともあたし達の大切な、自慢出来る息子達だよ!
でもこの子が何で倒れてたのか、もしかしたら……ううん、困っている人がいたら助け合うって、素晴らしいじゃないかい?うちの人の考えも同じなはずだよ!」



そう言ってくれたおねね様の表情は温かく、どこか懐かしい母親を思い出す。



 
 



幼い頃から寺小姓をやっていた俺は偶然にも鷹狩に出られていた、秀吉様(当時は羽柴秀吉様)と近江国観音寺で出会った。
秀吉様は喉が渇いたと、寺に寄り茶を所望した。俺は大きな茶碗に温く点てた抹茶を七、八分目入れ、次は前より熱く、茶碗の半分にも満たない量で点て、最後に小ぶりな茶碗に少量の抹茶を熱く点てて秀吉様にお出しした。





そして数日が経ち住職から羽柴秀吉様の小姓として仕えてはみぬかと言われ、俺はその話を申し受けた。「羽柴秀吉」様がどの様な人間性なのか、そして興味もあり、この人なら自分の生涯を捧げてでも就いて行こう、生意気にもそう思ったのを覚えている。
初めて会った時から俺は、秀吉様にどこか惹かれていたのかもしれない。


 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ