戦国話

□4.Audience
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    ー私は、未来人です。ー




「…未来から、か…」


娘が目を覚ましたので、この部屋で待てと釘を刺し(娘が出歩き、問題でも起こされたら堪らない)一応おねね様に報告をしに廊下を歩く。

「…」


(先の話…、信じがたい。未来人だと?そんな馬鹿な話が在るわけがない。
…しかし、あの娘の容姿、この国には無い上質なもの。それに、…嘘をついている目でもない。)


考えながら歩いていると、前から見知った男が近づいて来た。

「おや、殿。此方にいらっしゃったんですか。今から殿の部屋へ伺おうと思ってた所ですよ」

、と見た目に似合わずにっこり微笑んでくるのは、家臣の島左近


「そうか…、いや待て。」
(あの娘が居るではないか)

今ここで左近と顔を会わせておくのも、しかしどうせ何時かは知れる事。


「?、どうしたんですか?都合がお悪いならまた後で、」

「お前に話すことがある。付いて来い」


詳しくは語らず、俺は左近を連れ、おねね様の下へと向かった










「おねね様、」

「三成かい?入っておいで」



おねね様は俺が来た理由が解ったのか、入るよう促して下さった。左近にはここで待てと命じ、そして了承を得て襖を開ける


「失礼します…っ!?、秀吉様!」

襖を開けるとそこには秀吉様がいらっしゃった。


「三成、例のあの女の子の事ね、うちの人にも知らせておこうと思って今、話してた所だよ。それで、あの子は目が覚めたんだね?」


俺の顔色と心の内を読み取って下さったのか、おねね様が助言して下さった


「…はっ、一刻ほど前目覚めました。…秀吉様、御報告遅れて申し訳御座いません」

「よいよい、三成。して、その娘とやらは」

「はっ、私室にて待たせています。……秀吉様、その娘の事ですが…、」


俺は正直迷った。今此処で「娘はこれより先の時から来た」と言っても良いのか。

…いや、豊臣の、秀吉様に害するならば、その時は、
それに豊臣の為になるならば利用すれば良い。
俺とした事が余計な事を。


「なんじゃ?三成、申してみ?」

「はい、娘は今より凡そ420年後の国から来たと、申しておりました。」

「何と!そら、本当か?三成」

「はい、私も半信半疑ですが」

 
「俄には信じがたいのぅ」

「ねぇ、お前様」

「なんじゃ?ねね」

「あの子、今すごく不安でこれからどうしようって思ってると思うの。力になれないかもしれないけど、あの子が自分の国へ帰れる日まで、此処で一緒に暮らす事は出来ない「!おねね様!…、申し訳ございません。しかし私は反対です。娘の諸事情は兎も角見ず知らずの人間、あまつ異なる時代から来たあの娘、信用に足りますか。もしかしたらどこぞの間者かも知れません。」

「三成、人を見かけで判断しては駄目だよ。あたしはあの子を助けたいし力に成りたい。もしあの子が間者なら、責任は全てあたしが取るよ」

「おねね様!」

「ねね…
よっしゃ分かった!ねねがそこまで言うならわしはねねを信じるんさっ!」

「っ秀吉様!!」

「三成、お前の言いたい事も分かる。間違っても無いと思うぞ。其れだけこの豊臣が大切なんじゃろ。で、ねねの言いたい事も分かる。娘の言う通り先の時代からやってきて、娘一人でこの戦国乱世生き抜いて行くには難しいじゃろうなぁ」

「なら、お前様!」

「よしゃ!ならばこうしよう。三成、おみゃあがその娘の世話役になったらどうじゃ?」

「……、…は」

「わぁっ!それ良いねおまえ様!三成はこう見えて女っ気が全然無いから心配してたんだよ」

「ちょっ!待って下さい!何故そうなるのですか!大体娘を拾って来たのはおねね様ではありませんか!」



ダメだ!この方々は言い出したら聞かない!
障子の向こうで左近が笑いをこらえているのが分かる。
 












思いも寄らない事がおこり、俺の日常が非日常になりそうだ。




 
 

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