お題
□風に想いをのせて
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コンコン…
「リヴァイ兵長、名無しさんです」
いらっしゃらないのか、返事がない。
「リヴァイ兵長」
少し考え失礼しますと言いドアを開ける。開口一番に目が入ったのがリヴァイ兵長の執務机の後ろの大きな窓。窓が開いている。全開ではなく風を通す位の大きさで。はて、窓も開けっぱなしで兵長は一体何処へ…と足を進めるとソファに黒い影が。窓が気になりこちらへは近づくまで分からなかったが。
リヴァイ兵長、寝てる。珍しい…。人の気配がしたらすぐ起きそうな方なのに。それほど疲れがたまっているのか、規則正しい寝息にエルヴィン団長から今日中にリヴァイに目を通しておいてほしいと言われて書類を預かり兵長のお部屋に伺ったのに、何だか起こすのも気が引ける。そもそも一兵士の私があのリヴァイ兵長を起こすなんてもっての他で。
後からまた来よう。そう思い部屋を後にしようとしたが、人間と言うものは珍しいものを近くで見てみたいと言う欲求が湧いて来るわけで…。
(少し、少しだけ)
私は寝ている兵長に近づきしゃがんで寝顔を盗み見した。
仰向けになって腕を胸の上で組んでいる。足は伸ばされクロスされていて寝ている姿も絵になる。鋭い目は今は閉じている。睫毛長いな。鼻も高いし。顔色は良く無いけど、肌はきれいだ。風が吹くと微かになびく前髪、サラサラだなぁ。
この部屋風通りもいいし陽当たりもいいし、兵長も寝てしまうよね。
あんまり見ているのも失礼かと思って立とうとした。
そう、立とうとしただけなのに、しゃがんでいる足先に力を入れた時床に敷いてある立派な絨毯と自分のブーツが摩擦を起こし滑った。
「ぅわっ!!」
ぽすっと倒れた。そう…兵長の胸に。
痛くはなかったが多分、いや絶対今ので起た 。
どうしよう!!怒られる…!!
「まさかそんな趣味があったとはな名無しさん」
やっぱり起きた!!どうしよう怒られる…!!
「すみません!エルヴィン団長から書類を預かって来たのですが、リヴァイ兵長お休みになられていたので…あの起こすのも何だか気が引けて…」
最後の方は声が小さくなり。ガバッとリヴァイ兵長の胸から起き上がり両手はソファを掴んだままぺたんと座っている私
「それで人の寝顔を隅から隅まで盗み見してたのか、名無しさんよ」
ボッと顔が赤くなる。
「い、いつから起き、起きて…!!」
「お前が入って来た時からだ。何をするかと黙って見てたら人の顔をジロジロ見やがって」
「ひぃ!!ごめんなさい!!」
最初からではないかとツッコミたくなったが相手はあの兵士長様だ。叶うはずがない。
「お前、誰彼構わずあんなことするのか?」
「え?いやしませんよ!!兵長だから、ちょっと珍しく思いまして…。好奇心です」
「…そうか」
それ以降黙った兵長はエルヴィン団長からの書類を見て何かを書き留め、私に返した。エルヴィンに返しておけと。
サインも必要だったのかと思い分かりましたと預かり兵長の部屋を後にした。
後日
「団長!!この書類、ハンジさんに渡してきます」
「あぁ…いや、ハンジには私から渡しておくよ。名無しさんはリヴァイに頼む」
「?はい、ではリヴァイ兵長の所へ行って来ます」
「頼むよ」
なんの疑いも持たない女がある男達によって仕組まれているとはつい知らず…
"次から俺への用事は名無しさんを通せ。他はお呼びじゃねぇ"
「困ったもんだ」
一人つぶやく団長でした。