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食事の支度が済んだので、皆、ダイニングに集まった


「さっきも思ったけど、すっげー豪勢だよなぁ」

『そう?』

確かにおかずの種類も様々で美味しそうだけど、豪勢と言って感動するほどではない気がする

「魚も野菜も鮮度が良いからな。作りがいがあったぜ」

「刺身なんてめったに食べられないからねぇ、旦那」

「うむ。甲斐には海がないからな」

「卵もあるのか…」


確かに保存技術も運搬技術も乏しかった昔では、自分達の地域で採れたものしか食べられない。
飢饉とかがあった時は、今よりずっと深刻だっただろう

『いっぱい食べて、大きくおなり』

「……?(コクン」


じゃあ、と手を合わせる

『いただきます』

はっきりとそう言って箸を持ったところ、何故か周りから視線を感じた。
見渡すと、全員が不思議そうな顔でこちらを見ている

『……お米さん、お魚さん、お肉さん、お野菜さん以下略。貴方達の命を、私の命にさせていただきます』

そう言い直して、今度は私から視線をやる。
言うよね。言わないの?言っとこうよ。さぁ、言えって、さん、はい!

「「「いただきます」」」

うんうん、と頷いて、味噌汁を啜った

『美味しい!』

「ありがとうございます」
 
「なつみちゃん、この煮っ転がし食べてみて!俺様の自信作!」

「Honey, それよりもこっちの和え物の方が美味いぜ」

次々と料理を勧めてくるが、なんだか内容が「お袋の味」な気がする。
尤も、料理はもちろん掃除も洗濯も、買い物も全て家政婦さんの仕事で、母の手料理なんて食べた事はなかったが…


『……』

「なつみ?」

長曾我部の声にハッと我に返る

『あ…何?』

「……あのよぉ…」


言いづらそうに口ごもる。
ぐっと決心したように真っ直ぐにこちらを見た


「酒!ねぇのか!?」

『………ないよ』


 
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