カラフル

□26色
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汚した物や壊した物は、全て家の外に出した。
明日にでも業者に電話して回収してもらおう。
壁は仕方ないので絵を掛けて隠しておく


「珍しい絵だなぁ」

前田が感心したように言う

『油絵って言うんだよ』

「へぇ〜。有名な絵師が描いたんだろ?」

ううん。と首を振ると、じゃあ誰が描いたんだ?と聞かれたので、にこっと笑って自分を指差した

「ええっ!?」

『驚きすぎじゃない?』

「だって、こんな綺麗な絵…。なつみちゃんって絵師なのかい?」

『ただのしがない美大生ですよー』

まだ驚いている前田に笑い、ちょっと動かないで、と言う。
近くにあった広告チラシの裏側に鉛筆を走らせた


『……』

「……」

前田の顔を舐めるように凝視すると、照れくさいのか、頬を染めて顔を逸らした

『ダメ。こっち見て』

「…あ…ごめん」

『うん、そのまま…。すぐ終わるから…我慢して』

「……」


10分程度のクロッキーの間、私と前田の視線は何度も交わった


『……できた』

そう言って鉛筆を置くと、前田はどれどれ、と楽しそうに絵を覗き込んだ

「……すげぇ…」

『貴方達の世界とは、画風が違うでしょ』

 
久しぶりの速写とは言え、まあまあの出来だ。ちゃんとスケッチブックに描けばよかったかな…。
隣を見ると前田がじっと絵を見つめていた


「これ、もらっていいかい?」

『いいよ。ただし条件があるけど』

「聞く!なんでも言ってくれよ」


そんなにこの絵が気に入ったのか、と少し可笑しくなる


「なつみちゃん?」

『ううん。ごめん。じゃ条件ね』

「うん」

『条件は…また、貴方の絵を描かせてくれる事』


悪戯っぽく片目を閉じれば、一瞬目を見開いて、すぐに大きく頷いた


→ツヅク

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