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深夜、こっそり風魔の腕から抜け出す。
気づいているんだろうけど寝たふりをしてくれる風魔は優しい。
タバコとライターを持って、肩にストール掛けて階段を下りた
ヒュッ ヒュッ
聞き慣れない音がする。空気を斬るような、鋭い音。
縁側から庭を見れば、伊達が自分の刀を振っていた
「Honey…か?」
気配を読んだのか、伊達がこちらを振り向く
『ごめん。邪魔した?』
「……いや」
刀を鞘に納め、縁側に座ったのを見て、私も隣に腰を下ろした。
沈黙を破ったのは伊達だった
「悪かった」
『本当にもう痛みとかもないし、平気だって』
伊達は眉を寄せて、手を顔にやった
『待って』
眼帯に届く前に、その手を掴む。
震えているのがわかった
『何する気?』
「Honeyを傷付けた。俺もコイツを見せなきゃFairじゃねぇだろ」
『それこそフェアじゃないよ!』
自嘲気味な笑みを浮かべる伊達を、真正面から睨み付ける
『私は貴方達に何も話してない。蔵の事も、昨日の法事も、家族の事も言ってない。それは、私が言いたくないからだよ。だったら、伊達さんだって言いたくない事は言わなくていい。思い出したくない事は、思い出さなくていい』
伊達の眼帯にそっと触れると、ビクリと肩を震わせた
『私がこの疵痕を見せたせいで、貴方に無理させるなんて嫌だよ』
「だが…『私は、火傷を負った理由は言ってない。それは辛い思い出だから、思い出したくもない。でも、疵痕自体には何も嫌な思い出はない。だから見せたんだよ。…貴方は違うでしょ?』
「……ああ…」
『なら言わなくていい。もしこの先、見せてもいい、じゃなく、見せたい、って貴方が思ったら…その時はちゃんと受け止めるから、今は無理しないで』
そう言って、伊達の頭を抱え込むように抱きしめる。
震えが治まって、伊達の腕が力強く腰に回る
「……絶対に話す。それまで…」
『うん。待ってる…』
あちこちで立ち聞きしている男達には聞こえないように、伊達の耳元で呟いた
ツヅク
→あとがき