Novel
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りりりりりりり…
秋の夜長になんとも風流な虫の音が聴こえてくる。今頃なら恋人達が月でも見上げながら、その声に聴き惚れていることであろう。
一部の恋人達を除いて。
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「ん……はぁ……っ…」
大柄な男の上に跨り、唇を何度もついばむ麗人がひとり。着物は乱れ、玉の肌が生々しく月夜に輝く。鎖骨や、跨ったときに捲り上がった着物からすらりとのびた生足におちる陰がなんともあだっぽかった。
「っん…小田島様…」
「っぷはっ!馬鹿者!そう急く奴があるか!!」
下敷きにされてしまった小田島が唇を拭いなが怒鳴る。対して自分より体格の良い男を見下ろす薬売りは、嬉しそうに笑いながら熱っぽい眼差しを注いでいる。
「ひどいではないですか…」
「な、何が」
「唇を拭いてしまうなんて…情人の前ですることじゃぁ…」
「誰が情人だ!!誰が!!!」
薬売りのお気に入りでもある真ん丸の目を見開きながら怒鳴る姿は、はっきりいって、とてもこれから秘め事を行う雰囲気ではない。
「まったく…いつになったら慣れてくれるんでしょうね」
「慣れるも慣れないもあるか!!お前がいつも急なんだろうが!!!」