拍手有難うございます(´∀`)wwやる気の源です!!




水遊び@

 きらきら光る小川の水面に誘われてそっと、素足を付ける。さすがにこの季節ともなると、水は冷たいだけでなく鋭い痛みも伴うが薬売りは気にしない。ただ川に住む者達を脅かせないように静かに足を動かし、その感触を楽しんでいた。

 ちら、と後方を見ると、加世と珠生に何か話し掛けている小田島の背中が見えた。どうせ、疲れたか、足は痛くないかとか。そんな風な事を聞いているのだろうと思われる。

 自然と水を跳ね上げる音が大きくなっていく。ぱしゃぱしゃとたくさんの水玉模様が浮かび上がり、薬売りのしなやかな足を中心として何本もの円が描かれていった。

「こら!まぁた水遊びなぞしおって!風邪引くぞ」

 砂利をざかざかと踏みつけてこちらに向かってくる気配。足音も声も大きいがけっして小田島は怒ってはいないと、薬売りには見えずとも分かっていた。くるり、と振り返ると眉を少し顰めた小田島と目があった。片手には手拭いが握られており、もう片方の手で近くにある岩を指さされた。ちょうど薬売りの腰より少し高いぐらいの岩で、薬売りは促されるままに大人しくその岩に腰を下ろした。

「まったく…何度言えば分かるんだ。この時期好きこのんで川に入る奴がいるか」
「これくらいで風邪など引きませんよ」
「そうかもしれんが、体を冷やしてしまう事にはかわりはないだろう」

 小田島はそうぶつぶつ言いながら、川の水に冷やされ濡れてしまった足を丁寧に拭いてくれた。水滴を拭うと暖めるように何度かさすられる。それが擽ったくて時折その大きな腕にじゃれた。こら、やめんか、と制されても薬売りはその足をぱたぱたと動かしていた。

「よし。さっさと準備してお前も休んでいろ。一気に町まで歩くのだからな」
「はいはい」
「はいは一回だ。…ったく」

 何度言えば分かるんだ、と愚痴りながら小田島は加世と珠生の元へ戻っていった。

 薬売りはそっと乾いて少しだけ暖かくなった自分の足首を撫でた。そっと指で先程までの感触を思い出すように這わせる。きゅっと足先をつまむ。足の指と指の間まで丁寧に拭かれている事を確かめると、思わずくすりと微笑んでしまった。

 また、ちら、と小田島が行ってしまった方を見ると、三人が楽しそうに話しているのが見える。どうやら今夜の夕飯は何がいいか加世がわがままをいっているらしく、それを珠生と小田島がからかっているようであった。

 薬売りは小田島に言われたように足袋を履くでもなく、まだ素足のままで砂利に足をつけた。そして先程見つけた、落ちていた長い枝を掴んでまたざぶざぶとわざと水音を立てながら川に入っていった。

「小田島様!」
「あ!おい!!薬売り!!お前って奴はぁあ!!!!」

 今度こそ怒り心頭といった様子で小田島が駆けてくる。薬売りは振り返り小田島がこちらに走ってくるのを見て嬉しそうに微笑んだ。


おしまい





管理人に餌をあげよう!笑



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ