記念品

□大人な2人
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深夜──
ここはダングレストの宿屋。
ザウデから行方が分からなくなっていたオレが無事に戻って来たことで,心配して暗かったらしいみんなの雰囲気は明るく,笑顔が溢れる楽しい雰囲気に戻っていた。

そして今日は“ユーリ生還パーティー"をやったのだが,みんなはしゃぎすぎたせいか深い眠りについていた。

そんな中,オレとジュディだけはまだ眠くなくて起きていた。

「あなた,怪我してるんでしょう?怪我人はゆっくり休んだ方がいいんじゃないかしら?」

「オレはもう十分すぎるくらい休んだし,エステルが回復してくれたから平気だよ」

“心配してくれたのか?"と聞くと“どうかしら?"と,感情を読み取れない笑顔で返された。

彼女はいつだってそうだ。
オレが分かってないだけかもしれないが,ジュディは心の内を見せようとしない。
オレのことをどう思ってんのかも分からない。

…だから告いたいことも告えない

そんなオレは意気地なしなんだろうな,と思う。

「夜更かしすると寝坊するわよ?」

「そんときゃジュディが優しく起こしてくれるだろ?」

「そうね,カロルとリタに起こされても起きなかったら,起こしてあげてもいいわ」

「そりゃ最高の目覚めになりそうだな」

苦笑しながら言うと,ジュディは“ふふ"と柔らかい笑みをオレに向けた。
月明かりにジュディの顔がやんわりと照らされ,いつも以上に綺麗に見えた。
思わず彼女から目を逸らす。

「みんな,本当にユーリが好きなのね」

「え,何だよ突然」

ジュディはベッドで寝ているみんなを見,口を開く。

「みんな,必死であなたを探してたのよ。日が経つにつれて,どんどんどんどんみんな暗くなっていって…」

「…………」

「でも,あなたが戻って来た時のみんなはそんな感情なんてフッ飛んでたもの。モテモテね,ユーリ」

「それはありがたいな」

恥ずかしくなり,少しだけ俯く。

「あなたはみんなにとって,何よりも必要な存在なんだわ」

「…ジュディにとっても,か?」

「もちろんよ」

「“もちろん"って顔してないけどな」

「あら,おかしいわね。本当なのに」

オレ達は見つめ合い,微笑んだ。

「オレ,ちょっと風に当たって来るわ」

椅子から立ち上がったオレの腕を,クイッとジュディが引っ張った。

「?」

「私も…一緒にいいかしら?」

「いいけど……ジュディは寝た方がいいんじゃないか?」

「いいえ…あなたと一緒に,行きたいの」

消えてしまいそうな儚い表情で言われ,顔に熱が集まってくるのが分かった。
とっさに顔を逸らす。

「じゃ,行くか」

ジュディは手を離し,立ち上がってオレの隣に立った。

「まさかジュディが誘ってくるとはな」

「ふふ,喜んでもらえて嬉しいわ」

「言っとくけどオレ,野外でも全然平気だから」

「困ったわ,どうしようかしら」

「よく言うぜ」

「うふふ」

ニッコリ微笑んでいるジュディに“行こうぜ"と手を差し出せば,彼女は迷わず自分の手を重ねてきた。

それに安堵し,彼女の手を引いてオレ達は部屋を出て行った。






──おまけ?

ベッドから降り,2人が出て行った扉を見つめる影が1つ。

「もうもどかしいったらありゃしない!!あの2人はいつまでおっさんを焦らしたら気が済むのよ〜」

と,おっさんも2人を追うために扉を開けたのだった…。
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