記念品

□好きな気持ち
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「あんたがモルディオさん?【魔核】返してもらおうか?」
「はぁ?何のことよ」

出会いは最悪だった。
勝手に人の家に忍び込んで、勝手に家の中あらされて、挙句の果てに泥棒呼ばわりされて。
本当に最初の頃は、凄くアイツにムカついてた。


だけど、いつからだったか。
あたしは気が付けば・・いつもアイツを目で追ってた。

それがどうしてなのか、前までのあたしならわかんなかった。
だけど今ならわかる。だって聞いたから。
誰に聞いたかなんて、そんなの言わなくてもわかるでしょ?



この気持ちがなんなのか、あたしはやっと理解した。



あたしは・・あたしはアイツが・・


ユーリが好きなんだ・・。




「じゃ、夜まで自由行動っつーことで」

ユーリは言うと、他のみんなもそれぞれ相槌を打って好きなところへ散らばっていく。
そしてあたしもみんなと同じようにそこから離れようとした。

「あ。リタ、ちょっと待て」
「・・・何よ?」

何故か呼び止められた。
呼び止められた理由に覚えがなく首を傾げているとユーリはあたしに近づいてきて「手、出してみろ」と言ってきた。
「はぁ?」と最初は口答え、というか反論したけどユーリの背後にエステルが待機しているのを見るとどうやらもうバレているみたいだった。
この街へ来る途中、魔物と交戦中にあたしは右手首にかすり傷を作ってしまった。
だけどその事には誰にも気付かれることなくあたしは「気付かれてないのなら、このままやり過ごしてしまおう」と思い、今までこの傷を放置していた。

けど、何故あたしがこの傷の事を隠してるってわかったんだろうか?


「怪我してんだろ、見せてみろ」
「べ、別にいいわよ////・・こんなの、唾付けとけば治るから」
「いいから見せてみろって」
「っ・・」

半ば強引にユーリはあたしの手を取って傷を見る。
あ、溜め息つかれた。

「ったく・・。怪我した時は真っ先に言えって言ってあるだろ?」
「これくらいなら平気よ。大体あんたは心配しすぎなのよ」
「・・・・・。エステル、リタの傷治してくれ」
「はい」

ユーリの呼びかけに答え、エステルがあたしの所まで走ってきてあたしの手に治癒術をかける。
治癒術によって先ほど作った傷はだんだんと薄れていき、しばらくすると完全に消えていった。

「はい、もう大丈夫ですよリタ」
「・・あ、ありがとう」
「これからはちゃんと言えよな」
「・・・・」
「リタ」
「わ、わかったわよ////」

そう言うとユーリは口元を緩ませて笑いながらあたしの頭に手を置いてポンポンと叩いた。
それからエステルと一緒に宿屋の方へ向って歩いて行く。
それを見てあたしは先ほどまでユーリが触れていた頭に手を添えて、だんだんと離れていく彼らの背中を見つめた。

「・・・・」

宿屋へ向けて歩いていく二人を見て、あたしは少なからず羨ましいと思ってしまった。
あのエステルの場所に、もしあたしがいたら今頃あたしとユーリはどんな会話をしているのだろうか。
やはり専ら戦闘での事なんだろうか。
「後衛なんだからむやみに前に出るな」とか「あんま目立った行動はするな」とか。
後者の方は結構言われてることで、この前同じことを言われてあたしは「あんただって目立った行動してるじゃない」って言ったら思いっきり額をコツンと突かれた。

結構ユーリはあたしの事を子ども扱いしている節が見られる。
「子ども扱いしないで!」って言っても決まって「おまえ、子どもじゃん」って返ってきて反論できなくてその会話は終了する。
さっきだって、頭なんか叩いたりして・・完全に子ども扱いして
あたしはもう子どもじゃないっての。

「・・・・・・」

やっぱりユーリは、あたしの事・・ただの子どもで、大切な仲間としか思ってはいないのだろうか・・。
なら子どもじゃなければいいのかな?
エステルやジュディスみたいに子どもじゃなければユーリは、あたしを・・・。

「っ////」

って、何を考えてるんだあたしは。
そんな事でうだうだ悩んでても結局は何も解決なんてしないのに・・。

「・・・・」




結局あたしは、臆病な一人の人間なんだな。









「リタっち〜♪これから買い物なんだけど一緒に行かない?」
「はぁ?行くわけないでしょ、消えろ」
「・・・ひ、酷い(泣)」
「ふふ、楽しそうね。リタとおじ様」
「・・・・」
「?どうしたんです、ユーリ?そんな怖い顔して。気分でも悪いんです?」
「なんでもねーよ」
「あら。怖いわね。そんな怖い顔をしていると、リタに嫌われちゃうわよ?」
「っ・・////(なんで知って・・!?)」
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