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□帰り道
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本日は部活がなく、まだ青い空の下、家へと続く道を歩いていた。
隣には翼がいて、今日の授業の事とか、昨日帰って何をしたとか、色々と話している時だった。
急に話が途切れたので隣を見れば、何か見つけたらしく、嬉しそうな顔をして止まっていた。

「翼、どうしたの?」
「春っ、あそこにネコさんがいるっ!!」

駆け寄っていく翼の後をゆっくりついて行けば、塀の上で白と黒の猫が欠伸をしていた。
人に慣れている猫らしく、寄っていった翼に警戒することなく、簡単に腕に収まった。

「おとなしい猫だな」
「ね、毛並みも綺麗だからきっと飼われてるネコさんだよ。ぁ、ほら首輪がついてる」

ね、と言われて見れば、赤い首輪にクローバー形のネームプレートがついていた。
ほんとだ、と返して、名前を見てみる。
…これは、この猫の名前なんだよな…?

「『ポチ』?」

にゃあ、と応えるように鳴いた猫に、本当にこの名前なのか、と肩を落とした。
翼も楽しそうにくすくすと笑っている。

「なんかイヌさんみたいな名前だね」
「だな。飼い主さんに会ってみたいよ」

もしかしたら、犬も飼ってて、そっちは『タマ』かも、と言ってみれば、もう一度くすくすと笑った。
そして、ふわふわと腕の中の猫を数回撫で、ばいばい、と塀の上に戻した。
猫はにゃあん、と一つ鳴き、軽やかに塀を伝ってどこかへいってしまった。

「可愛いネコさんだったね」
「変な名前だったけどね」

じゃ、俺たちも帰ろうか、と手を差し出せば、おずおずと重ねて、ぅん、と微笑んでくれた。
まだ夕焼けには早かったけど、赤くなった顔は太陽のせいにでもしておこう。




帰り道



(翼は、猫と犬どっちが好き?)
(ぅーん、ネコさんかな)
(じゃあ猫と兎は?)
(んー…、…うさぎ、さん)
(そっか。じゃあ…(兎と俺は?))
(ぅん?なぁに?)
(ぅうん、なんもない)


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