月夜草子

□ただ強くあられたら
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それは、その景色のように僕の心もハラハラ散った、桜吹雪の事だった。




『………え、?』

『だから、アンタが何勘違いしてるんだか知らないけど、私はアンタと付き合う気なんて全くないのよ!』

『だって!先輩が卒業した日、僕が同じ高校に入れたら付き合ってくれるってーーーー』

『ああ、もう!そんな昔の事なんて知らないわよ。てか、アンタこの1年そんな事考えてたわけ!?気持ち悪い!』

『っ!』

『とにかく、本当に迷惑だから!もう私に近寄らないでっ』




憧れの、ずっと焦がれていた先輩だった。
同じ部活でとても面倒見が良く、しっかりしていて、弱さを見せない強い人だった。
だけど誰もいなくなった部室で、1人涙を流す様ないつもは虚勢を張っている実は弱い人で……


そんな姿にどうしようもなく惹かれた。
自分は先輩みたいに虚勢を張れるような強さもないし、自分の意見も上手く言えないような情けない性格だった。



『せっ、せせ先輩!!あの、ぼく……ッ、―――僕、先輩の事がずっと――ッッ!!』

『じゃあ、同じ高校においで。もしキラの気持ちが変わらないで、私を追いかけて来れたなら、その時は答えてあげる』

『本当にっ!?』

『うん、約束』



そう言って彼女は卒業証書の筒を振りながら、友人達の輪に去って行った。






…………何が悪い?



…………何が悪かった?





彼女の言葉を真に受けた僕か?


1年の間に変わってしまった彼女か?


それとも、それが彼女の本質で、上辺だけしか見えていなかった己の幼稚さか?




………何にせよ、虚しい……


苦しくて仕方ない――…


結果はどうあれ、僕は本当に好きだったんだ


彼女に会える喜びを胸に、この1年必死に苦手な教科も勉強もしてきたんだ


一足大人になっている彼女と釣り合いが取れるよう、おしゃれとかにも気を使ってきたのに………






モウ、スベテ、ドウデモ―――…イイ――………






 
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