零れ噺
□白いパラソルの下で/〜if……
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【白いパラソルの下で/〜if……】
そこは私の楽園だった。
「ねぇ、おとうたま」
「ん?何?」
「おかあたまは?」
「きっとあそこかな」
「あそこ?」
「うん。あそこ」
紫水晶の瞳を愛しげに緩める父の姿は、子供心にもとても綺麗だと思った。
父の、必ず頭を撫でてから手を繋ぐ仕草が、とても好きだった。
「じゃあ、僕達も行こっか」
「あい!」
キラキラ輝くお父様の瞳。
同じ色の私も、あんなに綺麗に輝けるかな?
「ほら。お母様いたよ」
大きなヒマワリをバックに立てられた、大きな白いパラソル。
その下に備え付けられた白いウッドチェアーで、手を組み眠りにつく美しい人。
鮮やかなピンクの髪が、白い肌を一層引き立たせ、長い睫毛が風に揺れる。
いつか読んでもらった、童話の中のお姫様みたい………。
私のピンクの髪も、お母様みたいに優しい色をしているかな?
「……ラクス」
お母様に優しく口付けるお父様の姿………
ああ……知ってる
この後どうなるか
お姫様は、王子様のキスで…………
「…………キラ」
ほらね?
「ラクス」
ああ………綺麗……
お父様もお母様も綺麗だけど、やっぱりお二人でいる姿が一番綺麗………
お母様が空色の瞳を細め、私の名を呼ぶ。
「いらっしゃいな」
鈴音のように心地好く響くお母様の声と、緩やかに手を差し出す仕草が好きだった。
「あい!」
そこは私の楽園だった。
この楽園で見つけた愛を、無二のものとしているお父様とお母様。
私にも、いつかそんな愛が訪れるだろうか?
もし訪れたら、お父様は号泣しそうだけど………
お父様には、愛して止まないお母様がいらっしゃるし………
お二人は私の憧れだから――…
この楽園で過ごした日々は、私にとっても全て
きっとここを離れても、最後に戻ってくるのは、この楽園………
ここは、私にとっても楽園なの―――……