月夜草子

□ただ強くあられたら
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『どうかしました?』



頭上から柔らかな声が降ってくる。



『気分でも悪いのですか?』




ああ、うるさい……


うるさいうるさいうるさい―――…




『宜しかったら、これを』



甘い香りに若干の吐き気を抱きつつ、膝に埋めていた重い頭を少し上げる。



『はい、どうぞ』



逆光で顔は見えなかったが、後ろの桜と同化する姿がとても綺麗で、温かそうで…………





苛立ちを覚えた




僕はこんなに――――ッッ!!




だから………






『ぃやぁああぁぁ!!止め――…ッ!ん、ンンンンゥッ!!!』


『………』



騒ぐ口にハンカチを詰め込み、暴れる四肢を押さえ付け、名も顔も分からぬ相手の服を無表情で乱していく。



『ッンン!!』



はだけた隙間から指を這わせば、彼女の体が大きく跳ねる。


その弾みで頬に水がかかった気もするが、敢えて抱く感情もなく………


抵抗を止めない彼女への煩わしさと、恐ろしく冷静で冷え切った感情のみが今の自分を動かしていた。




君が悪いんだよ?


僕の事なんか放っておけば良かったのにさ


偽善面してお節介なんて焼くから、こんな痛い目に合うんだ



……ああ、本当


めちゃくちゃに汚したくなる


汚して汚して汚して、僕と同じく醜くさせたい


君も堕ちてしまえばいいんだ――――……






『――ッ!!』



無理やり貫通させたモノを抉る様に何度も抜き差しし、自分の高まる熱のままに精の解放を行う。


元より余り濡れていなかったソコは、自分が吐き出した白濁の液でネットリと溢れ初め、その熱さと痙攣する中が気持ち良く、再び腰を動かし初めた。







それは高校入学を控えた、ある日の出来事。


それしか覚えていない。



残像的に思い出されるのは、桜と……甘い香り――……







 
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