月夜草子
□ただ強くあられたら
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――――…
「キラ!」
帰り仕度をしていると、双子の姉に声をかけられる。
「何?カガリ」
「今日私もアスランも部活休みなんだ。久しぶりに3人で寄り道していかないか?」
「う〜ん……。別にいいけど、せっかく時間が空いたんなら2人で行ったら?あんまり会う時間が作れないって、こないだも駄々こねてたじゃない」
「なっ//きょ、今日はいいんだよ!!3人で遊びたいんだよ!!」
顔を赤らめるカガリを見て、やっぱり女の子なんだなぁ……と改めて失礼な事を思う。
同時に、半身とも呼べる存在なのに、何でこんなに感情の表し方が違うんだろう…………と。
―――…
適当に街をぶらつき、ファーストフードで小腹を満たし、また街をぶらつく。
あまり2人の邪魔をしないよう、一歩下がって2人のやり取りに適当に相槌を打つ。
以前、あからさまに気を使った態度を取ったら、カガリに散々怒られた。
互いを想い合う2人の姿を見て羨ましくも思うが、まだ誰かを必要とは思えなかった。
あんなに好きだった彼女も、男をとっかえひっかえしていく姿に更に現実を見せられ、募った恋慕は次第に哀れみに変わったまま彼女は卒業して行った。
それから何人か告白も受けたが、恥じらいながら想いを告げられる程に、自分の熱は冷えていった。
女に何かを期待したり、胸を高鳴らせたり………そんな事はありえないと思った。
ただ、ふと脳裏を掠める桜色と甘い香りが自分の胸を締め付ける。
「あれ?」
自分の思考に耽っていると、アスランがふいに足を止めた。
「どうしたんだ?アスラン」
返答のないアスランの視線を追うと、ふわふわ揺れる桜色が視界に写った。
………あれ、は―――ッ