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□近づくほどに遠く
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繋いだ手の温もりを離したくなくて、
でも、
繋ぎ返すほどの勇気もない。
:近づくほどに遠く act.1:
空に向かい、ルルーシュは己の手のひらを翳す。
同年代の男子に比べて薄っぺらなそれは、燦々と照る太陽を受けてうっすら赤みを差していた。
誰もいない屋上でルルーシュは一人、ごろりと横になる。
遠くに聞こえるホイッスルの音が、今が授業中であることを示しており、当然のことながら彼はサボリだ。
翳していた手を下ろし、ルルーシュはころんと寝返りを打つ。
穏やかな風がそよぎ、適度な陽光が降り注ぐ中、抗えない睡魔に身を任せルルーシュが瞼を落としかけた瞬間、屋上へ通じる扉が勢いよく開かれた。
起き上がることもせず、ルルーシュがそちらの方に目を向けると、よくよく見慣れた茶髪の癖っ毛が目に入る。
実年齢よりも幾分か幼く見えるその顔には今、呆れの色がありありと浮かんでいた。
その手には二人分の教科書が抱えられており、彼はその内の一人分を、相変わらず寝そべったままのルルーシュの横に置いて寄こす。
それでも起きようとしないルルーシュに焦れたのか、相手はどっかりと腰を下ろしてしまった。
そんな様子を一瞥して、ルルーシュは横に置かれた自分の教科書を引き寄せ、あろうことかそれを枕にしてしまう始末である。
流石にこれには、茶髪の少年も眉を顰めた。
咎めるような視線を向けられるものの、ルルーシュに起き上がる気配は全くと言っていいほどない。
諦めたように吐き出された溜め息だけが、妙に響いた。
空は晴れている。
これ以上ないほどの快晴だ。
ぼんやりと吸い込まれそうな蒼を見上げながら、座ったきり動こうとしない幼馴染の様子をちらりと窺う。
彼は口をへの字に曲げて、じっとルルーシュの方を見ていた。
自分だってこんな所にいては授業を欠席してしまうというのに。
ルルーシュはくすりと小さく笑った。