短編・SS集

□悪魔の手、天使の手
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 雨の日の駅には魔物が潜んでいる。
 いつもは注意しているけど、少し寝坊してしまって急いでいたせいで今日は。

 ‥綺麗に滑ってしまった。

 鞄の中身もあたりに華麗に飛び散った。
 急いでいたからチャックが閉まっていなかったらしい。

 傍に友達がいれば『大丈夫?もうドジなんだから』で済んだのだけれど、生憎今は一人。それなりに利用者の多い駅でずっこけて尻餅、なんて恥ずかしいことこの上ない。
 まわりは皆、何もなかったかのように横を通っていく。
 痛みを懸命に堪えていると、「大丈夫ですか」と親切な人が声をかけてくれた。
 でもその親切さが、逆に羞恥心を煽る。私は俯いたまま「大丈夫です」と小さく答え、痛みを我慢して散在している鞄の中身の回収に向かった。
 近くのものを拾い終わり、派手に向こうまで飛んでいったペンケースを拾おうと、私は後ろを振り返る。
 けれど向こうにそれはなく、代わりにそいつは目の前に現れた。細長い指の大きな掌の中に、すっぽりと納まって。
「あ、あの、どうもすみません!」
 淡く甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
「気を付けて下さいね」
 顔を上げると、少し揺れた紅い髪と、にこりと笑う翡翠色の目があった。
「あ、ありがとうございましたっ!」

 朝のハプニングは、優しい花の香りによって締め括られた。









‐‐‐‐‐‐‐‐‐

梅雨入りということで。
‥なんかすみません。
でも、これ↑は
本気で恥ずかしいです。
(経験者は語る)

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'09.06.13
風蝶院泪菜

 
 

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