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森のフォーラム

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Re:短編小説
城平ろくむ
[ID:ranean]

某所のお題で書いたものです


・+・+・

「空気」「人形」


碧い硝子の眼。金の髪に、唇は血のように紅い。陶器で造られた肌は白く、すべすべしている。
服は黒のワンピースで、フリルがたくさん付いた所謂ゴスロリと呼ばれるデザインのものを着ている。
そんな格好のあたしは、見た目が十もいかない幼い子の容姿をしている。
透明な硝子のケースの中で座っているあたしは、もう何年もずっと同じ場所に居て、同じ部屋を眺めている。

生きてなどいない。
それでも、あたしは世界を少しずつ理解できるようになっていた。


あたしを造ったのは造主(ぞうしゅ)様だ。
『こんにちは。ようこそ』
眼を入れられて完成したあたしに、造主様が仰った言葉。その言葉があたしの、忘れられない最初だった。
造主様はあたしを撫でて可愛がってくださった。こんな、無機質の硝子の箱の中になど、入れたりはなされなかったのだ。
あたしは、造主様のお膝の上でお話を聞くのが好きだった。造主様はたくさんのお話をしてくださった。あたしみたいな子どもがいた事、その子はまだ小さいのに死んでしまった事。そのお話の時はいつも、悲しそうなお顔をされたっけ。
『死ぬとはどういう事か?』
その時のあたしはまだ理解できなかったけれど、造主様がとても寂しそうなお顔をされる事は理解できた。


今日は空気が死んでいる。
硝子ケースの中まで伝わってくる。
あたしはそういう事も理解できるようになっていた。
埃をかぶった頭でぼんやり考える。
あぁ、この家の主は死んだのか。
空気が重いのはその所為だ。
きっと、あたしはまた誰か見知らぬ人の手に渡るんだろう。

それも仕方のない事。
造主様が死なれた時を、汚れた頭で薄ぼんやりと思い出す。


あの日も、こんな風に空気が死んでいた。のしかかるような、そんな部屋の中であたしは造主様の枕元にいた。
いつまで経っても起きない造主様を、不思議に思っていた。まだ理解していなかった『死』は、造主様が黒く腐っていく事で、あたしの『核』に刻まれていった。
あたしは造主様と一緒に居た。
『死体の側にあったから』と、焼かれそうになった。それでも、奇特な人の手によって免れられた。その人があたしを硝子ケースに入れたのだけれど。


あれからもう何十年、何百年が経ったのだろうか。
何人の人があたしを所有し、愛で、売り、死んでいっただろう。
それはもう、考えるだけ無駄だ。

今日この日に、あたしを所有している人が死んだ。
それだけの事だ。


あぁ、造主様。

何故あたしを造られたのでしょう?
あたしは一体、幾つの『死』を見れば良いのでしょう?
答えはこの空気の中にありますか?

あの人が居なければ…。あの時、造主様と一緒に焼かれていれば良かったのに。



曇った碧い硝子の眼。金の髪には埃がたまっている。唇の紅はくすみ、白かった陶器の肌も薄汚れている。
ドレスの型は古めかしく、見窄らしいものだった。
可憐だったであろう少女の人形は、硝子ケースの中で死んでいた。
造主も判らないそれは、愛でる人も居ず、ただ汚れているばかりだった。

何百年も経た人形には、魂が宿るという。彼女は何を思い、そこに鎮座していたのだろうか。

知る由もないけれど……。


・+・+・


人形って可愛いけど怖い、そんなイメージで書きました
珍しく、PCsiteviewerで書き込みしてみました〜

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